天才レーサー・立川祐路「引退」 25年目の決断を語る

スーパーGT500クラス ZENT CERUMO GR Supraの立川祐路選手(撮影=三橋仁明 / N-RAK PHOTO AGENCY)


──7月28日にご自身のSNSとTOYOTA GAZOO Racingのプレスリリースで引退を発表されました。シーズン最中の引退発表も異例と言えますが、このタイミングについて聞かせてください。
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日にちに特別な理由はなく、6月の第3戦の後に決断してチーム、トヨタに伝え、そういう気持ちになったからにはシーズンが終わってからの発表ではなくて、ファンの皆さんにもシーズン中なるべく早くに伝えたい、そして残りのレースを応援してもらいたい、という話をしました。

ある意味、自分勝手に決めた引退でしたがみんな賛同してくれて、どうせなら8月の第4戦・富士の前に発表を、と言ってくれました。僕といえば富士スピードウェイのイメージも強い(9回優勝・ポールポジション11回の記録を持ち、「富士マイスター」とも称された)し、トヨタのホームコースでもあるので。また、そうすれば鈴鹿、スポーツランドSUGO、オートポリスで関西〜東北〜九州のファンに最後の走りを見に来てもらえますから。

僕自身はもう少し先になるのではないかと思っていましたが、数週間の間にすべて調整して、第4戦前日の8月4日に記者会見を開いてくれたり、特別なイベント演出をやってくれたりと、色々な準備をしてくれました。本当に感謝しています。
写真左から)トヨタ自動車の佐藤恒治社長、SARDの脇阪寿一監督、立川祐路選手、石浦宏明選手、GTアソシエイションの坂東正明代表(立川祐路選手 引退発表記者会見|8月4日富士スピードウェイ/TOYOTA GAZOO Racing主催)

写真左から)トヨタ自動車の佐藤恒治社長、SARDの脇阪寿一監督、立川祐路選手、9年間コンビを組んできた石浦宏明選手、GTアソシエイションの坂東正明代表(立川祐路選手 引退発表記者会見|8月4日富士スピードウェイ/TOYOTA GAZOO Racing主催)

苦しみながら、向き合い続けた「プレッシャーと緊張」

──先ほど「プレッシャーや責任からようやく解放される」という言葉が出ましたが、それらは立川さんにとって、どういったものでしょうか?
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例えば、レースの前の日なんかは眠れないですよね。寝てると言っても、レースのイメージをしながら寝てるし、一旦眠ったら朝までぐっすり、なんてこともなく、しょっちゅう起きちゃう。

予選の前もスタート前も、すごく緊張します。気持ち悪くなっちゃうぐらいです。

例えば予選でポールを獲って、次の日スタートする時は嫌でしたからね。もちろんポール獲った時は嬉しいんですよ、一番速いという証明ですから。でも決勝が近づいてくると、後ろから追われるイメージしか出てこない。優勝しか許されないぞ、とか。心が弱いんでしょうね。

──歴代最多記録で24回もポールポジションを獲得されていますけど...。

自分で自分の首を絞めるみたいな感じですよね。俺が一番優勝に近いところにいるんだから勝つぞ!みたいな、そういう前向きな考えでいられなかったんです。あーどうしよう、後ろにいっぱいいるな、みたいな(笑)。今でもそんな感じですよ。立川祐路選手
──その後ふっと姿を消して、戻ってきてからはすっとヘルメットをかぶって乗り込む、といった印象なのですが、どうコントロールして、どこでモードを切り替えているのでしょうか?

ある程度そうやってぼやいて、多少緊張を和らげて、メットをかぶったら覚悟を決めた感じですかね。その後は大体すぐ車に乗り込む感じですけど、こういうふうに走る、といったシミュレーションを頭の中でしています。その通りになることはほとんどないんですけどね(笑)。

走るイメージを始めたら、あとは自然に集中していくみたいです。ずっと緊張はしていますけどね、走り出すまでは。
立川祐路選手

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写真=GTアソシエイション 編集=宇藤智子

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