天才レーサー・立川祐路「引退」 25年目の決断を語る


──引退はこれまでで最も大きな決断だったのではないかと思いますが、ご自身にとってどのようなものでしたか?

25年間レーシングドライバーとして、メーカーもチームもずっと同じトヨタ、セルモでスーパーGT/全日本GT選手権を戦ってきましたから、転職も移籍もない。大きな決断って、今までの人生の中でなかったんですよね。

16歳頃からカートを始めて、ずっとレースの世界で人生をかけてやってきて、「プレッシャーや責任からようやく解放される」といった面もありますが、それだけに「やめちゃって自分に何が残るんだろう?」とか「人生もう終わりか?」ぐらいの不安というか、不安を通り越して、何か怖さすら感じるほどの決断でした。

引退を迫られるのでなく、「自分から辞める」ということも悩ましい決断でしたが、やはり自分が一番納得できなかったんです。勝てない自分、そんな状態で続けている自分を許せない。続けるのも、辞める決断をするのも本当につらかった。レースとか走ることが嫌いになったわけではないので余計にですよね。
立川祐路選手

「ファンのありがたみ」をあらためて痛感

──例えば、数年のコロナの影響はどのように感じていますか?

引退とは直接関係がないです。他のスポーツ同様、中止・延期や無観客、制限下での開催が続きましたが、みんな同じコンディションでしたから。

ただ、無観客開催の衝撃は大きかったです。それまで当たり前とは言わないですけど、たくさんのファンの皆さんが応援に来てくれている中でレースをやるのが自然なことだったわけで、お客さんがいないと、同じレースをやっててもこんなにも寂しいものになっちゃうんだなっていう。

表彰台に乗った時も前に誰もいなくて。これほどむなしい気持ちだったことはなかったです。やっぱりファンの皆さんのありがたみを痛感しました。僕だけじゃなくて、レース界みんなが感じたと思うんですけど。

──SNSもこの時期に始められたのですね。

はい。元々はそういうものにも無関心でしたし、自分のことを積極的に発信することはなかったんですけど、コロナ禍でファンの皆さんとの接点が一切なくなってしまったので、その分と思って始めました。

今ではほぼ元の状態でレースできるようになっていますが、SNSは続けています。やってて本当によかったです。

引退の発表でも直接伝えられましたし、メッセージもたくさんいただいて、ライバル勢のファンの皆さんまで残念だとか、残りのレースを応援すると言ってくれて。すごくありがたいことだし、SNSをやっていなかったら多分こんなにも気づけなかったかもしれない。


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写真=GTアソシエイション 編集=宇藤智子

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