僕の場合、プレッシャーや緊張の理由が、一緒に頑張っている仲間や期待してくれている人たちがいるからなんです。メーカーの威信をかけて、必死で車を準備してくれている仲間たちから最後を託されるわけですから、大きな責任があります。自分一人でやっていたら、多分こんなに緊張しない。
でも不思議なもので、プレッシャーや緊張が強いレースほど、結果を出せているんです。ごくたまに体調も良くて、やってやるぞ!的な時もあるんですけど、結果はいまいちだったりします。
一応レースウィークには予定を入れないようにしたりして、体調を整える努力はしていますが、日が近づくと結局具合が悪くなってくるので、やっぱり精神的なものだと思います。で、そんな時ほど結果が残せて、終わって気がつくと良くなってる。
──プレッシャーや緊張をそうやって集中や力に変えている、ということなのですね。ちなみに引退発表以降はいかがですか?
変わらないですね。すごく応援してくれる人たちがいて、背負うものがより増えたな、というのはありますけど。
でもその気持ちに応えたい。やめるんだから残りのレースは気楽にやれたら、なんて考えは一切ないです。最後だからこそ、良い走りを見てもらいたいし、結果を残して、かっこよく辞めたい。
──それでは11月4日・5日の最後のレースを控え、今どのような気持ちでいますか?
緊張感がありますよね。そして、残りのレースが減っていくにつれて、寂しさが増してきました。人生ずっとやってきたものがあと1戦しかできないのかと。
最後のレースを迎える瞬間、終えた時には、どんな感覚、感情になるんでしょうね...。直前まではいつもとそこまで変わらないと思うんですけど、いざその時になって、どんな思いで走るのか、自分自身想像がつかない。
──どんなところを見てもらいたいですか? 一言メッセージをお願いします。
シリーズ最終戦ということで、チャンピオンも決まりますし、独特な雰囲気になると思いますが、僕は僕で最後のレースなので、悔いのないように、どんな順位であれ、状況であれ、最後の1周、1秒までやり抜く、出し切るのを目標にやりたいなと。
引退発表してから、思っていたよりも全然はるかに皆さん寂しがってくれて、本当にすごく感動しているんです。だからとにかく、みんなの想いに応える走りがしたい。
もう感謝しかなくて、最後の最後まで、ありがとうという気持ちを込めて、全力で走るつもりでいますので、応援よろしくお願いします!
>> 後編「スーパーGTの最速男、立川祐路が愛された理由」へ続く(11月4日公開予定)
立川祐路(たちかわゆうじ)◎1975年7月5日生まれ、神奈川県出身。16歳でカートを始め、1993年に地方カート選手権でシリーズチャンピオンを獲得して、翌年エルフフォーミュラ・キャンパス(フランス)に参加しシリーズ4位。95年に帰国後、フォーミュラ・トヨタ西日本でタイトルを獲得して全日本F3選手権にステップアップし、98年から2009年まで国内トップフォーミュラであるフォーミュラ・ニッポン/スーパーフォーミュラに参戦。また、98年に全日本ツーリングカー選手権、そして全日本GT選手権/SUPER GTに99年から今シーズン(2023年)までレギュラー参戦。歴代2位タイの3度のシリーズチャンピオンに歴代2位の19回の優勝、歴代最多記録の24回のポールポジションを獲得している。