食&酒

2023.10.05 11:45

食文化の力で海を守る。オリヴィエ・ローランジェ氏に聞く

オリヴィエ・ローランジェ氏

──最近では、料理に海藻も使われるとか。
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ブルターニュは海の中は、さまざまな海藻が育つ豊かな庭です。30年前は、そんな海藻を、苛性ソーダの原料としてしか使ってこなかった。

今34歳の息子(レストランガイド「ゴエミヨ」で“今年のシェフ2022”にも選ばれているユーゴ・ローランジェ氏)は、海藻に魅せられて、店のそばには海藻の倉庫を設け、10年もの、12年ものの海藻をストックしています。昆布や近所で養殖されているワカメもあります。

レストランのメニューに肉は一切なく、動物性のゼラチンの代わりに海藻を使っています。私が料理を作っていた時の味の骨格は鳥のブイヨンでしたが、息子は私が熱湯に鶏を漬けているのを見て「もう嫌だ」と言ったのです。今、料理の味のベースになっているのは、野菜のブイヨン、スパイス、海藻です。
オリヴィエ・ローランジェ氏

オリヴィエ・ローランジェ氏

──世界では、肉の提供を中止し、野菜などの他は魚だけという店が増えています。それには賛同されますか?
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もし私がリヨンやブレスにいたら、ブレス鶏やシャロレ牛を使わないのは不自然でしょう。それが答えです。私たちの店の目の前には、モン・サン=ミッシェルがあり、素晴らしい貝類や、オマール、蟹などの甲殻類が取れる。魚も海藻もある、野菜もある。十分タンパク質は補えるのだから、肉を使わなくても良いでしょう?

──その土地にあったものを提供するということですね。

若い料理人に、「あなたが作れる一番美味しい料理はなんでしょう?」と聞かれたことがあります。

愛情が込められた、お母さんや奥さんが作る料理でしょうか? それも正しいですが、私は「生きている土地の自然の味がする」ことだと思います。

今朝とれた香りがして、その時の風の方向や湿度、そういったものが感じられる料理です。だからなるべく近くの新鮮なものを手に入れて料理するのが「美味しい」ということですし、それが食文化だと思います。

自分を表現する料理というのは、地方料理というのではなく、自分をいるところを起点として、近くから手に入るもので作る料理です。体にもよくて味が良い、結果として心も満たされる料理。難しいけれど、素晴らしいことだと思います。

文・写真=仲山 今日子

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