暮らし

2023.05.21 18:00

子どもも高齢者も、難民も移民も 世界一のシェフが生む「優しい循環」

シェフのマッシモ・ボットゥーラ氏(右奥)、モデナのパスタ工房「トルテランテ」にて

シェフのマッシモ・ボットゥーラ氏(右奥)、モデナのパスタ工房「トルテランテ」にて

「世界のベストレストラン50」で2度の世界一に輝き、国連の親善大使としても活躍するマッシモ・ボットゥーラ氏。「発信力を活かし、食の力で社会貢献する」をモットーに掲げる彼の活動が、さらなる広がりを見せている。

ボットゥーラ氏の活動で有名なのは、無料のレストラン「レフェエットリオ」だろう。賞味期限が近くスーパーマーケットなどで廃棄されてしまう食材を使い、路上生活者においしい料理を提供することで、豊かさを実感してもらう活動を続けている。
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優しさが循環するパスタ工房

複数の社会問題に対し、まるでパズルのピースを組み合わせるような最適なコンビネーションを見つけて解決に導く──。そのボットゥーラ氏がいま力を入れるのが、自閉症や遺伝的な疾患をもつ子どもたちと、子どもが巣立ち、話し相手が減ったお年寄りたちとが共にパスタを作る工房「トルテランテ」だ。

そこで作られたイタリア・モデナの名物パスタ“トルテッリーニ”は、ボットゥーラ氏のレストラン「オステリア・フランチェスカーナ」や「カサ・マリア・ルイージア」などで提供されるほか、余剰分は販売もされている。

現在26人の子どもたちが参加しているが、さらに多くの参加希望があることから、今年は工房を拡大し、小売のための店舗も作る予定だ。


オステリア・フランチェスカーナから徒歩20分ほど、訪れた工房には明るい日差しが差し込み、思い思いにトルテッリーニを作る人たちでいっぱいだった。指導係の年配の女性たちのみならず、ボランティアの若いスタッフもおり、自由気ままにおしゃべりをしながら手を動かしていて、堅苦しさは全くない。

なかには、自分で作ったトルテッリーニをつまみ食いして、他の子に「生なんだから食べたらダメ」とやんわり注意されている子も。見つからないようにこっそりもう一度つまみ食いしているところを筆者が目撃すると、「シーッ」と、人差し指を口の前に立てて、ちゃめっ気たっぷりの表情を見せた。

「自閉症といっても程度はさまざま。包む最後の工程までできる子もいれば、切り分けたパスタ生地の上に、具をのせるところまでの子も。その子の個性に応じて、できることを楽しみながらやってもらうのが大切」と、ボランティアの女性がいう。

歌うように声を出し、足を踏み鳴らしながら作る子もいれば、少し話しただけでは、自閉症とはわからない子もいる。「日本のアイドルが大好きで、特にきゃりーぱみゅぱみゅが好き」と、話してくれた。
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文・写真=仲山今日子

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