「敵は以前から準備していた」ともソロニコは指摘する。「装備や兵士は遠くからでも発見され、狙われる。両軍とも、陣地や部隊配置の場所が限られていることを理解している。樹林帯の中には十中八九、撃つ標的がいる」
ウクライナ軍がロシア軍陣地の制圧に成功すると、砲撃はさらに激しくなる。ロシア軍の航空機の乗員や砲兵は、ウクライナ軍に渡るかもしれないという想定で、かつての自軍の陣地を攻撃するためにあらかじめ位置を登録しているからだ。
ソロニコによると、重さが1360kg以上あるロシア空軍の衛星誘導の滑空弾は、ウクライナ軍が最も恐れているものだ。誘導弾のKABは1発で数mの深さの穴を開け、数km離れたところにいる無防備な歩兵を殺すことができる。ロシア側は「爆弾を惜しみなく使っている」という。
要塞を突破し、平野を横断する際に直面するあらゆる危険について、ウクライナ軍は少なくともその対処法を知っている。第82旅団、そして第46空中機動旅団や第47機械化旅団などメリトポリ軸に沿って戦う部隊は、べルボベを攻撃するにはまず、北西に数km離れたロボティネを解放しなければならなかった。
ロボティネの塹壕は、べルボベの塹壕と同じくらい大きな障害だった。それを突破するために、ウクライナ軍は砲兵隊を先頭にして徒歩で移動した。次のロシア軍の陣地を制圧するために払うことになりそうな犠牲を慎重に計算しながら、ゆっくりと前進した。
ベルボベの解放という次の大きな任務には、少なくともウクライナ軍の第9軍団が細心の注意を払っているはずだ。同軍団は南部戦線で最も装備の整った多くの旅団を擁する強力な編隊だ。ロボティネをめぐって戦った数週間、南部の旅団は装甲車の大部分を、最初の大隊がスロビキン・ラインを突破した日に示されたそのチャンスのために温存していた。
以前ならウクライナ軍は徒歩で前進していたかもしれないが、今や高性能の歩兵戦闘車であるマルダーとストライカーに乗って進んでいる。
ウクライナ軍はそうした兵士の多くを失うだろう。だが、車両が設計通りに機能すれば、最も破壊力のある攻撃を受けた場合を除いて乗員や搭乗の兵士を守ることができる。「装甲は危険を伴う特定の目的を果たすものだ」「これらの行動は人命を救うため正当化される」とソロニコは説明する。
たとえストライカーやマーダーが燃えても、歩兵はベルボベまで1.6km続く平野で戦い続けることができるかもしれない。
(forbes.com 原文)