今年8月のペルセウス座流星群の折には、天体観察会のご案内中に大きな流れ星「火球」が長く尾を引いて流れ、その場にいたみなさんが歓声をあげ大きな拍手が起こりました。人生で初めて流れ星を見た、という方もおられましたが、人生初の流れ星が火球とは珍しいかもしれませんね。
南阿蘇ルナ天文台で行っている天体観察会では、お帰りの際にアンケート調査を実施しているのですが、
「星を見ていたら、明日からまた頑張ろうと思った」
「自分の悩みが小さなものに思われて、人生観が変わった」
「とても癒やされた」
「家族を大切にしなければと思った」
といった声をいただくことがよくあります。ストレスが多い現代に生きる私たちにとって、天文台で実際に星を見て宇宙の神秘に触れることは、ストレスの軽減や孤独感の解消に一定の効果がありそうです。
また、多くの日本の公開天文台には「名物解説員」や独特なキャラクターたちが存在するなど、利用者にとっての体験がより楽しく思い出深くなるような工夫が多くなされています。また、お子さんを対象に(といっても大人でも楽しめます)、天体をテーマにしたペーパークラフト教室やものづくりを行うイベントなどもよく行われていますので、みなさまもぜひお近くの天文台を調べてみてください。
すでに江戸時代、学者が望遠鏡を用いていた
一方、アメリカで宇宙物理にたずさわっていた時には、天文イベントのときにアマチュアの天文ファンが望遠鏡を持ち寄って観望会をしたり、天文学部のある大学などで、ボランティアの学生たちが望遠鏡を使って他の生徒や地域の人を対象に観望会を行うといったニュースやイベントにはよく出くわしました。しかし、本格的な天文台が公開活動を中心的な活動のひとつとして運営され、そのような施設が一般の方を対象に天文イベントを盛り上げる、といったような例には出くわしたことがありません。
南阿蘇ルナ天文台に海外からお越しになるお客さまに、母国で公開天文台にいらしたことがあるかとお聞きすると、今のところ例外なくそのようなものは知らない、と言われます。一方では、有名な天文台や博物館が特別イベントとして観望会を開いたりはしており、このような活動は「アウトリーチ」などとよばれたりします。
このように、海外の多くの天文台や、日本の学術的活動を中心にした天文台が行うアウトリーチとしての公開活動と、日本の公開天文台の行っている天文普及活動とでは根本的なところで大きく異なっているように見えます。ではなぜ、日本には公開天文台がこんなに多く存在しているのでしょうか?