マテリアル・クラウドファンディング
また、しげんポストには地域の最適なサーキュラーデザインを実現するための、もう一つの役割がある。田中氏「しげんポストには重量センサーが入っており、何曜日の何時に投函されたかのデータを見ています。どの地域のどの場所にどの時間帯であれば最も人々が回収に参加しやすいのかを実験しながら見つけていく、という意味もあります」
これらのしげんポストから収集されるデータなども活用しながら現在開発が進んでいるのが、資源循環ルートの見える化を目指す地域資源循環デジタルプラットフォーム「LEAPS(Local Empowerment and Acceleration Platform for Sustainability)」だ。最終的にはいつどこでどのような資源がどの程度回収されたかをリアルタイムで見える化することで、全く新しい市民参加型のまちづくりの実現を目指している。
田中氏「例えば、公園のベンチが欲しいと思ったとき、みんなで洗剤パウチを300枚集める必要があると分かったり、『あと20%で達成です』みたいなことができたら面白いですよね。みんなで資源を収穫して、みんなでまちをつくるという感じです」
オランダでは、地域の人々が生ごみを持ち寄り、「Worm Hotel」と呼ばれる公共コンポストに投入し、堆肥化できたら収穫祭として出来上がった堆肥を持ち帰ってまた家庭菜園などに活用するという仕組みがあるが、LEAPSでは、まさにそのプラスチック版のような未来が構想されている。
また、しげんポストと合わせて重要な役割を果たすのが、面白法人カヤックが提供する「まちのコイン」だ。まちのコインはカヤックが開発するコミュニティ通貨で、しげんポストに資源を投函すると、まちのコインを入手できるようになっている。田中氏は、このまちのコインを活用することで、さらなる体験が提供できるという。
面白法人カヤックが提供するまちのコイン
しげんポストに投函すると、まちのコインがもらえる
田中氏「まちのコインのアプリを通じて、集めた資源でこういうアイテムができたと連絡するようにしているのですが、そうすることで、回収に参加してくれた人の体験がマテリアルのクラウドファンディングのような体験になるのです」
「また、今後まちのコインをごみの収集業者の方に送ることができるようにできないかなぁと妄想しています。自分以外の循環に携わっている人々へ、リスペクトを送りあうツールとしてコインを使うことができれば、結果として互いのウェルビーイングが高めあえるのではないかと思っていて、地域通貨を活用した「リスペクト経済」の可能性を研究するグループも活動を開始しています」
市民がお金ではなく素材を寄付することで、まちに必要なベンチや遊具が増えていく。また、その協力を通じて手に入れたコインを使って感謝を示し、リスペクトが循環することで地域のウェルビーイングが高まっていく。物質以上の何かが循環する未来がそこにはある。
まちに実装されていく遊具とベンチ(提供:リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ)