ビジネス

2023.10.08 11:00

日本と米国で違う「目に見えない価値」への向き合い方

中道:山田さんのお話をうかがっていると、その時々に目の前にあるものを繋いできた結果、1つのボールが回転しはじめて、いろいろな人がそこに関わって仕事も広がってきたという感じがします。

海外に長く住んでいろいろなことをやられてきたわけですが、世界の中の日本人や日本という国をどんなふうに見ていますか。

山田:日本は、ものづくりもコンテンツも素晴らしいです。でも、それを伝えるのがうまくいっていない。それは日本に、「控え目なことがいいこと」とか「言いすぎると自慢になる」とか、「出る杭は打たれる」みたいな文化があるからだと思います。

あとは、日本のものづくりが素晴らしすぎたからだと思うのですが、良いものを作りさえすれば売れた時代から抜けられてないところがあるかもしれません。SNSの時代、Web3、生成AIの時代になってくると、ただ良いものをつくれば売れた時と競争率が変わり売り方の上手い方に負けてしまう事も増える。例えば映画も、どんないい映画を作っても配給されないとみられません。素晴らしいコンテンツも、それの存在をまず知ってもらい、そこにどうやって見に来てもらうかが重要です。

日本人は、同じソフトの部分(目に見えないもの)でも、医者や弁護士のような国家資格があるようなものにはお金をかけるけれど、例えばプロモーションやブランディングとかいったものには社内でできる程度以外あまり目を向けてこない傾向にありました。

米国で映画をつくる時は、200億の予算があれば100億で制作して、同じくらいクリエイティブや売ることに使います。でも日本は200億全部制作費に使ってしまう。日本がコンテンツの良さを伝えきれていないのはそういう認識の違いがあるからだと思います。

日本は今、フードロスにしても自然災害にしても課題先進国です。だからそれを何かしらの技術で予防したり察知したりできれば、それがジャパンモデルとなってそこに関してはプラットフォーマーになれるはず。課題先進国が課題解決先進国になるために、すでに追い風に乗っているものや、解決可能な課題を解決することで世界の模範として貢献できるはずだと思い、今はそういうことにも力を入れています。

中道:日本人は1回ハマると全体が動き出しますから、いかに早くそこまで持っていくかが大事ですよね。

山田:インターネットが出てきて、その後もどんどん技術が進んで、いろいろなことがものすごいスピードで進むようになって。それに翻弄されて焦る必要はないけれど、スピードについていくことは大事です。難しいけれど。

中道:課題解決先進国としてのジャパンモデルも、他国にシェアできることがたくさんあるはずです。僕らの次の世代のために、今のうちに何とかしないといけないと思います。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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