国内

2023.09.14 16:00

海外メディアは2000年時点でジャニーズ事務所性加害問題を報じていた、が?

石井節子

『ニューヨークタイムズ』特派員だったカルビン・シムズ氏(現在はCNN上級副社長)の2000年当時の記事

以下、ライター/編集者水科哲哉氏による、「ジャニーズ事務所性加害問題に関する海外メディア歴代報道」についてのまとめと考察を紹介する。


「BBCが初めて」ではなかった

かねてくすぶっていたジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏による性加害問題は、イギリスのBBCによるドキュメンタリー番組の放映、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会による調査などによって再燃し、今や全世界で報じられている。

ただしBBCにしても国連にしても、一連の性加害問題に海外から初めて切り込んだ組織ではない。遡ること1999年の『週刊文春』による告発キャンペーンを受けて、『ニューヨークタイムズ』『ガーディアン』などは2000年の時点でこの問題を報じていたのだ。

『ニューヨークタイムズ』が喜多川氏の性加害問題を最初に扱ったのは2000年1月。『週刊文春』の発行元である文藝春秋とジャニーズ事務所の法廷闘争が始まってから2ヵ月ほど経った頃だ。筆者のカルビン・シムズ氏は当時『ニューヨークタイムズ』の特派員であり、現在はCNNの上級副社長に収まっている。

「性、皇室、右翼団体といったデリケートなテーマに日本のメディアは及び腰」

シムズ氏は2000年1月の記事で、まず梨元勝氏(芸能リポーター)と藤田博司氏(共同通信元論説副委員長、上智大学文学部新聞学科教授)の2氏を訪ね、日本特有のメディア事情について問いかけている。これに対する梨元氏と藤田氏の回答は注目に値する。というのも、両氏は2000年の時点でこの問題の根深さについて次のように答えているのだ。

https://archive.nytimes.com/www.nytimes.com/library/world/asia/013000japan-talent.html

「ジャニーズ事務所の意向に従わないと、所属タレントが軒並み番組から降り、彼らにインタビューすることもできなくなる。そうなったら、各テレビ局の視聴率は急落するだろう。紙媒体についても同じことがいえる」(梨元氏)

「性、皇室、右翼団体といったデリケートなテーマに日本のメディアは及び腰である。幅広い報道が期待できるのは、当局が喜多川氏の捜査に乗り出した場合のみだ」(藤田氏)

「私をはじめとするメディアがもっと前に、特に北公次氏の告発本が最初に出版された時に、被害を訴える人々をしっかり取材していれば、ほかの青少年たちは被害に遭わずに済んだかもしれない」(梨元氏)
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文=水科哲哉 編集=石井節子

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