2000年時点のインターネット普及率は日本でわずか30%
『ニューヨークタイムズ』と『ガーディアン』はアメリカとイギリスを代表する大手紙だ。しかし両紙が2000年の時点で一連の性加害問題を取り上げても、冒頭で述べたBBCや国連人権理事会ほどのインパクトを与えることはできなかった。それはなぜだろう。まず2000年の時点ではジャニー喜多川氏、メリー喜多川氏も存命であり、ジャニーズ事務所は日本の芸能界の盟主として君臨していたことが考えられる。それにドイツの統計調査データベースサイトであるスタティスタによると、アメリカのインターネット普及率は2000年時点で約43%、日本は約30%にすぎず、SNSやYouTubeといった拡散力のあるツールは影も形もなかった。
しかし現在は状況が様変わりした。ジャニーとメリーの両氏は鬼籍に入り、ジャニーズ事務所所属タレントの退所が相次いでいる。その一方で、日本や欧米諸国の大手マスコミはジャニーズ事務所絡みのニュース記事を英語でも日々発信しており、前掲のジャニーズ事務所による謝罪会見はインドネシアの『ジャカルタポスト』やインドやスリランカのニュースサイト、果てはアラブ首長国連邦のニュース衛星放送局アル=アラビーヤも取り上げていた。
https://www.thejakartapost.com/culture/2023/09/07/japans-johnny-kitagawa-sex-abuse-scandal-forces-shake-up-at-j-pop-agency.html
https://www.firstpost.com/explainers/japans-shame-sexual-abuse-scandal-j-pop-world-johnny-kitagawa-johnny-associates-12602662.html
https://www.adaderana.lk/news.php?nid=93222
https://english.alarabiya.net/News/world/2023/09/07/Japan-boyband-agency-president-quits-over-sex-abuse
ジャニーズ事務所所属タレントのCM打ち切りについては、インドの『ニューデリータイムズ』も報じている。インターネットとスマートフォンの普及によって情報が瞬時に世界を駆け巡る現在だからこそ、ジャニーズ事務所の今後の対応が注目される。
水科哲哉(みずしな・てつや)◎日・英・韓の3カ国語を解するライター/編集者。ビジネス書、自己啓発書から、政治や歴史関連本、科学書に至るまで、60点以上の多岐にわたる翻訳書の編集制作に従事。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』『Forbes JAPAN』などの記事翻訳にも携わる。音楽ライターとしても活動中。アンフィニジャパン・プロジェクト代表社員。Twitter @Tmizushina