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2023.09.22 10:00

中小企業の経営者が知るべき「M&Aの失敗事例」売却編

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他の失敗事例も以下に挙げたい。

・売却側オーナーの働き方が当初の約束と大きく違ったケース

5年間働き続けるという約束だったにもかかわらず、報酬の減額に始まり、委任契約の解除にまで至ってしまった。買収企業は業績が思ったより伸びなかったことを理由にしたのだが、売却側のオーナーは当初から業績について話し合っていた上、そもそも業績を回復させるためにM&Aを実行していた。

・会社が吸収合併により跡形もなくなってしまったケース

M&Aを実行する前には売却企業を当面(口頭では10年以上)存続させるという約束だったが、M&A後、わずか1年で吸収合併され、売却企業がなくなってしまった。その際、本来は不利益変更が不可能とされている雇用契約においても、何らかの理由をつけて実質的な減給に値する対応を取られ、大量の離職を起こされてしまった。売却企業のオーナーは、何のために会社を売却したのか、なぜこんなことになってしまったのか、と後悔していた。

・買収企業側からの援助がまったくないケース

買収企業側は人員的な余力が少なく、M&A後の統合業務(PMI)に知見がなかった。そのため、売却企業は当初思い描いていた援助を受けられず、期待されたM&Aの効果が出なかった。売却側、買収側ともM&A前からシナジーを想像して気分が高揚していたが、実態が伴っていなかった。
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情報格差が失敗を生み出す

吸収合併の件であっても、援助が不十分な件であっても、M&Aの前と後で約束が違わないのであれば、それは失敗ではないだろう。つまり、売却側が大手のグループに入ろうと積極的に吸収合併を選択する場合もあれば、M&A後も独立性を保ちたいからと援助を最小限にとどめる選択もあるのだ。
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なぜ失敗は起こるのか。そこには情報の格差が潜んでいる。初めてM&Aを行う企業と、何度も検討を重ねて知見を溜めた企業とでは、M&Aに対する情報量や、それを支える専門家たちの質に大きな差ができてしまう。

M&Aを検討されている経営者にとっては決して他人事ではない。M&Aに関わるすべての人が納得いく結果になるには、正しい情報を確実に入手することが不可欠になる。M&Aは大金が動き、人生を左右する重要な局面にあたる。それゆえに、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の跋扈(ばっこ)するリスクをはらんだ経済活動だということを理解してほしい。失敗をしなければ直接的に成功にも繋がるため、信頼できる専門家と慎重に進めていくことを強くお勧めする。

文=安藤智之

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