このレンズを通してみた際、夢は私たちの安全を確認し、困難な状況に対応する準備を整えるという脳の主要目的を果たすための試みの1つであると考えられる。
2. 夢はランダムなものではない
2011年にJournal of Neuroscienceに掲載された研究は、人間の脳は、将来、意味を持つことが期待される記憶を選択的に強化しているという興味深い証拠を発見し、夢もまた、感情的により強烈な昼間の体験の断片を選ぶ理由を説明した。私たちの夢の内容は、出来事の持続時間よりも性質の方が重要であることも示唆しているようだ。例えば、読書やコンピュータ操作といった私たちが毎日多くの時間を費やしている平凡な体験は、社会的交流や個人的に重要で本人にとって目新しいあるいは関連の深い体験といったより意義のある出来事と比べて、夢の中で「スクリーンを占める時間」が少ない。
興味深いのは、夢をみる時刻もまた、夢で何をみるかに関係していることだ。2022年の研究によると、夜の早い時間の夢は、より最近の記憶を使用するのに対し、夜遅くの夢には比較的古い、1週間以上前の記憶が用いられ、それはその時の睡眠の段階(眠りの深さ)によらない。
また、夜遅くには未来志向の夢をみることが多く、これは翌日の出来事に備えて、起きている時間に近い内容になるように仕組まれている可能性がある。
そして研究チームは、夢は夜を通じて、似たようなテーマを異なる睡眠段階で繰り返す傾向があることも発見した。これは、私たちが無意識のうちに何を処理し、何の準備をしようとしているかのヒントをもたらすものだ。