米国で復活し始めるマスク着用義務 NY市は多変異株「ピロラ」に警鐘

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米国の一部の病院や教育機関が、マスクの着用義務を復活させている。米国では新型コロナウイルスの変異株「EG.5」(通称エリス)やその他「XBB」系統の派生型が広がり、足元では入院患者数も増えている。ただ、専門家からは、マスクの着用は本人の年齢や感染リスクの高さに応じて判断すべきとの見方も出ている。

ニューヨーク市のアシュウィン・バーサン保健・精神衛生局長は先週、多数の変異を起こした新たな変異株で、米国などで見つかっている「BA.2.86(通称ピロラ)」について、「ワクチン接種や以前の感染でできた免疫を回避しやすそうだ」と注意を促した。同局の報道担当者は先週、英紙デイリー・メールの取材に、4日の「レイバーデー」を含む3連休には、屋内の混雑した場所でマスクを着けるのが「いい考え」だと述べている。

ジョージア州アトランタにあり、伝統的に黒人の教育を目的としてきたモーリス・ブラウン大学は8月下旬、9月からの新学年度を控え学生が戻ってくるなか、すべての学生と教職員を対象に2週間のマスク着用を義務化。「学生の間で(新型コロナの)陽性例の報告がある」として、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)も呼びかけた。

米医療保険大手カイザー・パーマネンテも、運営するカリフォルニア州サンタローゼの医療機関で、新型コロナの「検査で陽性となる患者が増えている」として職員や患者、訪問者にマスクの着用を義務づけた。医療機関ではニューヨーク州でもユナイテッド・ヘルス・サービス、オーバーン・コミュニティー病院、シラキュースのアップステート医科大学の病院などがマスク着用義務を復活させている。

カリフォルニア州サンタモニカでは、映画スタジオのライオンズゲートが自社施設の一部でのマスク着用を従業員に求めた。従業員数人が新型コロナにかかったことなどを受けた措置だという。

サンフランシスコでは、医療従事者が患者と接したり、拘置所や刑務所の職員が入所者に近づく場合には、引き続きマスクの着用が義務となっている。

米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国で8月19日までの1週間に新型コロナで入院した患者の数は1万5067人と、前週から18.8%増えた。3年あまり前に新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が発生して以来、米国で累計の入院患者数は627万人超にのぼる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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