中道:それは、日本というブランドに価値を見出して対価を払ってもらうという、ブランドビジネスの根本的な話になりますね。
小野:そうですね。今はどうしても個別の動きしかないので、もう少し大きなグループや組織、あるいは協会なのかもしれませんが、もっと大きな枠でお互いの取り組みが合わさっていくと、進化が加速すると思います。
中道:小野さんたちの活動において、クラブチームというブランドをどのように考えていますか?
小野:インドネシア代表のマルセリーノ・フェルディナン選手は18歳ですがA代表で活躍していて、東南アジアのオリンピックSEA GAMESでは国に32年ぶりの金メダルをもたらしました。彼は僕らのKMSKデインズに移籍して、試合にも出場してゴールを決めています。インドネシアでは、インドネシア人がいよいよヨーロッパに本格挑戦して、どこまで行けるのかという成功物語を楽しんでいます。これが我々のブランディングです。
僕らがアジアの強い選手を採るのは、インドネシアやタイやベトナムの人々に、僕らが原石を引き揚げて活躍させる存在だと認知してもらうためです。そのためにもお預かりしている選手をきっちり育て、活躍してもらい、彼らの成功ストーリーを一緒に楽しみ応援してもらう。そうすると3億人のインドネシアの人々の力を借りられる。これが、日本が抱える課題、もっと人を呼び込むためのヒントになればいいなと思っています。
中道:1人の選手を世界レベルに引き上げることができるのは代表ではなくてクラブですからね。
小野:クラブとして、そこはきっちりやるべきだと思っています。とはいえ、スペイン4部のトレモリーノスCFではアジア人選手はまだ出場許可を得にくいという現実があります。僕らが有望な選手を育てて多くの選手にトレモリーノスで活躍してもらえば次の道が開けるはずです。
中道:そういう広がりができれば、W杯がまた面白くなりますね。日本のサッカーが本当に強くなりW杯で優勝する。それは日本の話だけじゃない。ボトムアップも含めてすごく大きな夢のあるプロジェクトですね。