小野:この事業をやろうと思ったのも、東南アジアの熱狂を活用できればポテンシャルが大きいと感じたからです。歴史的にも東南アジアの国々はヨーロッパとの関係が深くて、プレミアリーグなども放映されていて文化的にサッカーが根付いている。僕は日本こそアジアのプレミアリーグになれると思っているので、そうなる意識を強くもってもらいたい。
Jリーグにもアジア戦略という旗を掲げて、東南アジアのクラブと提携するような動きが見られるようになりました。まだ日本では強くなるために海外に出て挑戦するイメージが強いですけど、アジアの受け皿になり、Jリーグの魅力を最大限に生かすような大胆な動きをするのも面白いと思います。
中道:そうなると面白いですよね。でも、小野さんがおっしゃるように、まだ日本の選手はヨーロッパの方が上だと考えていますよね。実際はどうなんですか。
小野:カタールW杯で15試合見てきましたけど、世界のトップ層と日本やアフリカの選手の実力差は確実に縮まっています。前回W杯の日本人選手26人のうち19名が海外でプレーしています。海外のクラブを経験すると同じお作法で戦う勝手がわかる。それは大きいと思います。
中道:海外のお作法を経験したことのある人と、そうでない人の差は大きいんでしょうね。
小野:イメージを共有してパスを出したり動いたりするので、みんなが同じものをイメージできるということは非常に重要です。
指導ひとつとっても流行り廃りがあります。フォーメーションなどの戦術も、紙の上で学ぶのも大事かもしれませんが、ライブで起きていることを肌で感じ、自分たちとの違いを認識して、そのギャップを埋めることを自然にできるようになれば、スペインやドイツの戦術や監督の考え方やお作法に近づいていくでしょう。
中道:そういう意味でいうと、小野さんがやろうとされていることはすごく大きな意味を持ちますよね。選手だけでなく、監督やコーチといった周りの人たちをもっと活躍させることも大事だと思うのですが、実際はどうなんでしょうか。
小野:モラス雅輝さんがヨーロッパで指導者として活躍されています。メディアがそういう情報を取り上げて支援するようになればもっと挑戦しやすくなると思います。日本人に限らず、見えないものに挑戦するのはハードルが高い。あとは、日本人が失敗はダメなことではなく尊いことだと考えられるようになれば海外に出やすくなると思います。
中道:そこを変えないと日本はどんどん取り残されていくという恐怖感があります。だからアクションを起こさないといけないと思っています。小野さんの活動を世界の人に知ってもらい、いろんな力が組み合わさっていくと面白くなりそうですよね。