Policy Fundとは、「Policy(政策)」と「Fund(集団投資スキーム)」を掛け合わせた造語。「これは普通の基金ではありません。いわば、政策のベンチャーキャピタルなんです」と、Policy Fundを仕掛けるPoliPoli代表・伊藤和真はその構想に胸を張る。一体、どういうことなのだろうか。
先日、世界を変える30歳未満の日本人を表彰する「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞した伊藤と、寄付を表明した両名に取材した。
社会課題解決に「レバレッジをかける」
伊藤の中には、こんな仮説があった──1億円の基金から1000万円ずつ10件の寄付で、社会課題解決の先行事例をつくっていく。その内1つから、10億円の国家予算を計上される政策が生まれれば”10倍の社会的リターン”。そこから、より大きなインパクトを生む政策へと反映されれば “10倍以上の社会的リターン”と言えるのではないか──Policy Fundは通常のファンドと違い、資金の出し手に経済的なリターンはない。代わりに社会へのリターンがある、という発想だ。金融の世界では、少ない資金でより大きな金額を動かすことを「レバレッジ」と呼ぶ。伊藤に言わせれば、Policy Fundは「寄付金にレバレッジをかけた、社会課題の新しい解決策」。「レバレッジという資本主義の本質を、非営利、政治の世界へ持ち込みたかった」と構想の意図を説明する。
これは、19歳でアプリ事業売却を経験し、慶應大学生をしながらVC(ベンチャーキャピタル)に勤務、そこから政治・行政系サービスの起業家へと転身した、伊藤らしい構想とも言える。
伊藤がベンチマークとするのは、海外の一流財団だ。ビル&メリンダ・ゲイツ財団やフェイスブック共同創業者ダスティン・モスコヴィッツらのOpen Philanthropy財団と協業して、プロジェクトを進めてきたPoliPoli。その過程で、海外財団が資本主義の考え方、ビジネスのスキームをフル活用して、フィランソロピー活動をスケールさせている様を目の当たりにした。
「政策化で予算や政府に反映することで、元の寄付金にレバレッジをかけて、グローバルな社会課題を迅速に解決するといったアプローチを、海外財団は当然のように行っている。Policy Fundは、そうした動きを日本でも実践するというのがコンセプトの一つです。資本主義、VCのスキームを、日本のフィランソロピーに活かしていきます」