また、多くのAIシステムには固有のバイアスが存在することを考えると、これが子どもの世界観をどのように形成するかも気になる点です。専門家は、子ども向けと謳うチャットボットについても、より厳密なテストが必要かもしれないと警告しています。
また、子どもたちが生成AIシステムとの対話ややり取りを通じて、個人データを共有するようになると、子どもたちのプライバシーやデータ保護に関する課題も生まれます。オーストラリアのeセーフティー監督官(eSafety Commissioner)は、特に商業目的での子どものデータの収集、利用、保存に対して慎重に検討する必要があると指摘しています。
広範囲に及ぶインパクト
AIがもたらす変化には、チャンスとリスクを併せ持つものもあります。例えば、生成AIが子どもたちの将来の仕事や生活にどう影響をもたらすかはまだわかりません。新たな仕事を生み出す一方で、重要な仕事を取って代わる可能性もあります。これは、今を生きる子どもたちが受ける教育やその方法に関係してきます。チャンスとリスクはさまざまですが、これらの例はAIが持つ広範な影響を示しています。子どもたちは、生涯を通じてAIに関わることになりますが、特に成長期における関わり方が、その先長く影響をもたらす可能性があり、政策立案者、規制機関、AI開発者、その他のステークホルダーは先を見越したアプローチを取る必要があります。
行動の必要性
出発点として、既存のAIリソースは、今日の責任あるAIのあり方について多くの指針を提供しています。例えば、ユニセフの「子どものためのAIに関する政策ガイダンス(Policy Guidance on AI for Children)」は、AIの政策及びその実践において子どもの権利を守るための9つの要件を定めているほか、世界経済フォーラムの「子どものためのAIツールキット(AI for Children toolkit)」は、テック企業や保護者に向けたアドバイスを提供しています。しかし、生成AIの進化に伴い、これまでの政策は、日々変化する新しい状況に合わせて解釈される必要があり、新たなガイダンスや規制が策定される必要性も出てくるでしょう。
政策立案者、テック企業、そして、子どもたちや次世代の保護に取り組む人々は、早急に行動を起こす必要があります。政策立案者たちは、生成AIがもたらすインパクトに関する研究を支援し、洞察力を持って、将来起こりうる課題に備えるためのガバナンス強化に力を入れるべきです。その際に、子どもたちが取り残されないようにすることが重要です。
同時に、透明性の向上、生成AIのプロバイダーによる責任ある開発、子どもの権利の提唱が求められます。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、AIを規制するグローバルレベルの取り組みには、すべての国の全面的な支援が不可欠だと、強調しています。
生成AIと子どもたちへの影響に関する詳しい情報は、ユニセフの資料をご覧ください。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>