AI

2023.09.07 07:00

生成AIが子どもの成長に与えるリスク

生成AIが、子どもたちにもたらすメリット

生成AIは、宿題のサポートや難しい概念の分かりやすい説明、子どもたちの個々の学習スタイルやペースに合わせたパーソナライズされた学習体験など、さまざまな機会を提供します。

AIを活用すれば、子どもたちは、プログラミングスキルがあるかないかにかかわらず、芸術作品の制作や作曲をしたり、物語やソフトウェアを書いたりすることができるので、創造性が育まれます。

障害のある子どもたちは、テキスト、音声、画像を通じて、新たな方法でデジタル・システムと対話し、AIと協力することでクリエイティブな活動をすることができるでしょう。子どもたちが直接システムを使うことで、生成AIは、健康や発達に関連する課題の早期発見にも役立ちます。間接的には、生成AIシステムは、医療データに対する洞察を提供し、ヘルスケアの進歩をサポートする可能性も秘めています。

より広い意味では、分析と生成能力をさまざまな分野に応用することで、効率を高め、子どもたちにプラスの影響を与える革新的なソリューションを開発することができます。

生成AIが、子どもたちにもたらす悪影響

しかし、生成AIは、悪意のある人々による悪用や、不注意によって、子どもたちの未来やウェルビーイング(幸福)に悪影響を及ぼし、社会全体の混乱を招く可能性もあります。

生成AIは、人間が生成したコンテンツと区別がつかないほど説得力のあるテキストベースの偽情報を、瞬時に生成することができます。AIが生成した画像は、本物の顔と見分けがつかず、場合によっては、本物以上に信頼できると認識されることもあるほどです(下図参照)。

こうした能力は、影響が及ぶ範囲を広げると同時に、それに必要なコストを下げる可能性があります。認知能力がまだ未熟な子どもたちは、誤情報や偽情報のリスクに対して特に脆弱な立場置かれているのです
AIが生成した顔の画像は、本物の顔と見分けがつきません。 Image: Sophie J. Nightingale and Hany Farid, 2021

AIが生成した顔の画像は、本物の顔と見分けがつきません。 Image: Sophie J. Nightingale and Hany Farid, 2021


特に、子どもたちが長期的に生成AIを利用することへの影響については、疑問が投げかけられています。例えば、チャットボットが人間のような口調で話すことを考えると、こうしたシステムとのやり取りは、子どもの発達にどのような影響をもたらすのでしょうか。初期の研究では、知能、認知発達、社会的行動などに関する子どもの認識や特性に影響を与える可能性が示されています。
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文=Steven Vosloo, Digital Foresight and Policy Specialist, United Nations Children's Fund(UNICEF)

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