トップ10リストには、持続可能な航空燃料やウェアラブル植物センサーなど、環境イノベーションも含まれています。
このほか、AIの力を活用したイノベーションや分子生物学の改革まで、多岐にわたります。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
テクノロジーは止まることのないディスラプター(破壊的イノベーター)です。私たちの暮らし、仕事、遊びのあり方を変え、ビジネスや産業を再定義し、地球や社会の複雑な課題に対処するかつてないソリューションを提供します。
アイデアが浮かんでは消えていく変化の激しい世界において、どの新興テクノロジーが、意思決定者、起業家、市民とって、今後の数年間で最も重要なアジェンダとなるでしょうか。
世界経済フォーラムが、フロンティアーズと共同で作成した「2023年の新興テクノロジー・レポート トップ10(Top 10 Emerging Technologies of 2023)」は、世界20カ国の90人を超える学者、産業界のリーダーたち、未来学者の視点を結集し、今後3年から5年の間に、人と地球に最も影響を与える可能性の高いテクノロジーを発表しています。
気候変動との闘いを後押しするサステナブルなソリューションから、飛躍的変化を遂げる生成AI(人工知能)モデルまで、私たちの未来の生活を改善する可能性が高い新興テクノロジー・トップ10をご紹介します。
気候・自然の危機との闘い
持続可能な航空燃料
航空業界の二酸化炭素排出量は、世界の総排出量の2〜3%を占めていますが、2050年までに、世界全域で排出量が大きく増加する見通しです。ほかの多くの業界とは異なり、航空業界では、バッテリーのパワーウェイトレシオが電化を困難にしています。そこで登場するのが持続可能な航空燃料(SAF)です。合成燃料はバイオマスのような生物由来の原料や、二酸化炭素のような非生物由来の原料から製造され、既存の航空インフラや設備で使用することができます。現在、持続可能な航空燃料は、航空業界の燃料需要の1%程度を満たすにとどまっています。しかし、同レポートは、同業界が2050年までに排出量ネットゼロを達成するためには、この比率を2040年までに13〜15%に引き上げる必要があると指摘しています。
ウェアラブル植物センサー
国連食糧農業機関によれば、増加する世界人口の食料需要を満たすには、2050年までに世界の食料生産を70%増加させる必要があります。作物のモニタリングは、この目標を達成するための重要な鍵を握ります。従来の土壌試験や作物の目視検査は高価で時間がかかるため、低解像度の衛星データや、後にはセンサー搭載型ドローンやトラクターを使ったモニタリングが行われるようになりました。
しかし、マイクロサイズのニードルセンサーを個々の植物に埋め込めば、植物の健康状態の改善や農業の生産性向上を実現するデータを大量に取得できる可能性があるとことを、同レポートは明らかにしています。こうした装置は、温度、湿度、水分、栄養レベルをモニタリングすることで、作物の収量を最大限に高めたり、水や肥料の使用を減らし、病気の兆候を早期に発見したりするのに役立ちます。