最近、彼女に当時の思い出を尋ねたところ、父や産地の職人から多種多様な技術を教わり、日本にしかない手仕事の文化を学ぶという経験を経て、卒業後はベッドリネンの企業でテキスタイルデザイナーとして就職をしたということでした。また、春に母と野草を取りに行ったのも、日本の生活を知るとても良い経験だったと話してくれました。
ものをつくって売るという一方通行のビジネスではなく、言葉や文化の垣根を超え、共感を生み出す。一つの企業が小さな地方に新しい風が吹き込む架け橋になり得るという基盤を感じました。
また、父がほぼ最年少の職人となり、数十年にわたり“教える”という要素が抜け落ちていた有松において、少々カンフル的なやり方でしたが、職人にとっても手取り足取り言葉が通じない相手に教えるいいトレーニングになったようでした。伝統は、つくるだけではなく、教えるという両軸があって初めて動き出すのだと思います。
その後、ドイツ、イギリス、イタリア、フランス、スイス、アメリカ、アイスランド、フィンランドなど現在までに12カ国、50人以上のインターンが有松に絞りを勉強にしたいという理由で来日しています。僕がヨーロッパの大学や美術館などでワークショップやレクチャーを行った際の受講生から連絡をもらうことも多く、そういった学生らを有松に送り出しています。
もしこの記事を読んでいらっしゃる方の中で僕らsuzusanの製品を着用してくださっている方がいれば、そのどれかはインターンの学生が一緒に作ったものかもしれません。彼らは高いモチベーションで有松を訪れ、その滞在期間に多くのことを学び、吸収しようとします。
卒業後に有名なラグジュアリーブランドに就職した学生、自身で起業した学生もいて、インターン後の彼らの成長を頼もしく見ています。また最近では、有松で働く若いスタッフが英語に必然性を感じると同時に、自分たちの技術が「わざわざ海外から来てまで学ぶほど特別なもの」であるという認識を持つようになってきています。