政治

2023.08.25 08:00

日本のプレゼンスを芦屋市から高める 新時代的市長が描く「未来への挑戦」

10万人都市で持続可能な発展モデルを

彼の仕事はまず対話から動き出す。インターンを経験したこともあり、部長クラスの半数以上はすでに知っていた。就任直後から1対1の面談をセッティングした。聞いたのは「本当はやりたいけど、やれていないことはなんですか?」だ。

「僕は市役所では“素人”です。その分、しがらみもなくて組織の常識からは自由だけど、職員からすればできないことには相応の理由があるのかもしれない。先にやりたいことや知見を共有して、掘り下げていきたいと思ったんです」

そして「若さ」に特化して世代間の分断を煽るようなこともしない。選挙戦から年長世代を「先輩世代」と呼び、予防医療を重点的に訴えた。同世代プラスアルファの「現役世代」なら保育や子どもの医療費無償化、「未来世代」の子供たちに向けた教育政策とわかりやすい政策パッケージを打ち出すことで、支持を拡大した。

教育委員会とも対話を積み重ねるなかで、新しいアイデアをもらった。髙島が「中学生の声も聞いてみたい」と口にすると、「給食を一緒に食べるというのはどうですか?」という提案があり、実現に結びつけた。「僕は40年後、60代後半です。まだまだ現役でしょう。いまの芦屋に住んでいる中学生や小学生から『なんで、あんな政策をしたんだ』と言われる立場なんです。何を課題と感じているかを聞くことは当然です」

短期的に最大の課題はJR芦屋駅南地区の再開発だ。これまでの計画案では「駅前で、市民が交流スペースや自然に触れる空間が確保できない」とし、その代わりに「緑」「集える」「歩ける」「未来志向」「地権者の生活を守る」という5原則を提示した。再開発はまちづくりの根本にかかわる部分なだけに、対話の場をデザインする姿勢が発揮できる局面だろう。

では長期はどうだろうか―。将来のビジョンを問うと野心的な答えが返ってきた。髙島曰く、日本の国際的なプレゼンスは下がっている。アメリカでも関心は中国、インドや韓国のほうが高い。もう一度、日本がプレゼンスを高めるには何が必要か。「10万人程度の都市で持続可能な発展のモデルをつくることが大事だと思うんです。いまの少子高齢化という課題をどう転じていけるか。芦屋で示すことができれば、市民のためにも日本のためにもなる」

髙島の野心はトップとして未来のまちづくりの責任、そして「公共」へと向かう。人材はビジネスから公共へ。強いリーダーから、対話からヒントを掴むリーダーへ。時代の流れは彼とともに動き出すのかもしれない。

ジャケット198000円(ラルディーニ)、シャツ29700円、パンツ27500円(ともにアスペジ/すべてトヨダレーディング プレスルーム)


たかしま・りょうすけ◎芦屋市長。1997年2月生まれ。灘中学・高校卒業後、2015年、東京大学入学、中退。同年9月ハーバード大学に入学し、何度か休学し世界の街づくりを見て回る。19年芦屋市役所でインターンシップ。22年、ハーバード大学環境工学専攻卒。23年5月から現職。

文=石戸 諭 写真=帆足宗洋(AVGVST)スタイリング=千葉 良(AVGVST) ヘアメイク=KUNIO Kataoka(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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