オフィス復帰戦略が多様性に与える影響
RTOの議論では、生産性に焦点を絞るあまり、もう1つの非常に重要なポイントを見逃している。人々をオフィスに強制的に戻すことは、特定のグループの人々、特に最も弱い立場の労働者に不釣り合いな影響を与える。これには、経済社会上の立場が低い人々や、大きな介護責任を負っている女性など、フルタイムのオフィス勤務が不可能であるような人々などが含まれる。興味深いことに、NBERの調査では「より貧しい労働者、パートタイム労働を好む労働者、家族の介護義務を負う女性」など、特定のグループについては、オフィス勤務とリモートワークの間に生産性の差がないことがわかった。実際、研究員らは「広範な育児支援の提供など、これらの制約を緩和する政策は、総体的な生産性に大きな影響を与える可能性がある」と示唆している。
新入社員や第一線で働く従業員の不本意な離職という途方もないコストを考えると、リーダーは全社的なRTOを避け、少なくともこうした背景をもつ従業員にはハイブリッドやリモートワークの機会を提供するようにするのが賢明だろう。
結論:オフィス復帰戦略の議論をより広い視野で捉える
これまでに挙げた3つの経済的要因(不動産、雇用維持、採用)は、そのどれか1つだけをとったとしても、生産性の損失が疑われてもなおリモートやハイブリッドワークを維持することを正当化しうる。また、この3つすべてを考慮した場合、厳格なRTOポリシーの結果として生じる損失が、労働者の生産性の向上によって相殺されるシナリオを想像するのは極めて難しい。さらに考慮すべき点として、厳格なRTOポリシーは、伝統的に不利な立場にある特定のグループに不釣り合いな影響を与え、組織の多様性をさらに低下させることになる。まとめると、私が心から推奨するのは、リーダーたちは注目を集める見出しや表面的な関連性しかない研究に目を向けるのではなく、入手可能なデータと健全なビジネス思考を慎重に活用し、自社と従業員にとって最善の戦略を見極めることである。潜在的な経済的利益や損失を考えることも重要だが、最適なRTOやリモートワークポリシーを作ることは、さまざまな人々にとって心地の良い職場を作り、より多様な組織によって優れた経済的結果をもたらすことにつながるだろう。
(forbes.com原文)