オフィス復帰戦略が従業員の定着率に与える影響
仕事の柔軟性とワークライフバランスは、従業員の定着率に決定的な影響を与えることが示されている。最近の調査では、オフィスへの復帰を強制された場合、約半数の従業員が他の仕事を探すという結果が出ている。自発的に退職した従業員の後任にかかる費用は、職種や年功序列にもよるが、年俸の50%から200%におよぶという調査結果もある。不本意な退職による直接的な経済的コストはもちろんのこと、管理職は後任者の募集や採用に奔走しなければならず、チームは退職者の穴を埋めなければならないため、従業員の損失は会社全体に悪影響をおよぼす。RTOを決定する際、リーダーは人員削減の増加によって生じる財務上および経営上のリスクを含めるべきである。
オフィス復帰戦略が採用に与える影響
厳格なRTOの実施は、採用にも大きな悪影響をおよぼす。先に引用した調査に加え、リモートワークによる生産性低下を示した同じNBERの研究でも、RTOが採用に悪影響をおよぼすという具体的な証拠が示されている。具体的には、リモートワークの仕事に応募したが、会社側からオフィスでの業務をオファーされた人の80%が、その仕事を辞退していることがわかった。就職後の継続調査を続けるのに十分な人数を確保するため、研究者たちは、リモートワークを好む調査対象者にオフィスでの仕事を受け入れるよう説得するのに多額の報酬を提供しなければならなかった(NBER報告書のセクション3.6を参照)。少なくとも働く場所をある程度柔軟に変えたいという従業員の願望(場合によっては、明白な必要性)を無視する企業は、人材確保がより難しくなるのは明らかだ。リモートやハイブリッドワークの提供を拒否すれば、人材の供給が減少し、結果的に採用コストが上昇し、人材レベルが低下する可能性がある。リーダーは、RTO戦略を設計する際に、費用対効果の計算でこの点を考慮する必要がある。