経営・戦略

2023.08.18 11:30

従業員のオフィス回帰は「生産性」だけを見て決めてはいけない

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組織はリモートやハイブリッドワークを排除し、従業員にオフィスへの復帰を強制すべきなのだろうか? 従業員の生産性は、WFH(ワーク・フロム・ホーム、在宅勤務)戦略とRTO(リターン・トゥ・オフィス、オフィス復帰)戦略に関する議論の焦点となっているが、リーダーは組織にとって最も有益な戦略を設計する上で、より広い視野を持つことが有益である。

全米経済研究所(NBER)が最近発表した研究は、厳格なRTOを支持しているようだ。ランダム化比較試験を採用した本研究によれば、自宅で仕事をする労働者は、オフィス環境で同じ仕事をする労働者よりも生産性が18%低かった。この研究結果は「リモートワーク革命」を崩壊させるという意見もある

しかし、NBERの研究はインドのチェンナイで下層階級の労働者を対象にデータ入力作業の生産性を測定したもので、WFHのパンドラの箱を開けたパンデミックよりずっと前の2017年に実施されたものだ。パンデミック後の米国を拠点とする金融サービス企業やハイテク企業などに、これらの調査結果を一般化するのは賢明ではないだろう。

さらに、パンデミック中やパンデミック後に実施されたものも含め、生産性へのマイナスの影響がわずかである、あるいは生産性にプラスの影響さえあるという研究結果もある。

しかし、これらの研究の妥当性や適用可能性にかかわらず、従業員の生産性だけに注目すると、RTO戦略を設計する際に考慮すべき多くの要因を見逃してしまう。

オフィス復帰戦略の物質的コスト

まず第一に、労働生産性だけに焦点を絞ると、組織が厳格なRTOを実施した場合に発生する可能性の高い、他の有形コストが無視される。なかでも明らかなのは不動産コストだ。ほとんどの組織にとって、追加のオフィススペースを提供するコスト(光熱費、メンテナンス、その他の関連コスト)は、生産性向上による潜在的な節約額をはるかに上回る。特に、自社ビルを所有していない中小企業や不動産コストの高い地域では、リーダーは望ましい戦略を決定する上で、この要因を無視することはできない。
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翻訳=江津拓哉

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