取材後期
世界トップレベルのスタンフォード大学医学部(School of Medicine)。そこで活躍し、さらには、日本にスタンフォードの起業家教育プログラムを導入した人がいる。池野先生の噂はあちこちから聞こえてきていました。「スタンフォードの先生」という敷居の高いイメージを良い意味で裏切られる、本当に素晴らしい方でした。池野先生自身がハングリーに育ち、挑戦をすることの喜びを知り、そして今でも、世界トップクラスの環境で挑戦する喜びに満ちている様子が伝わってきました。
池野先生が深くかかわっているバイオデザインは、医学部発イノベーションを多く生み出してきました。そのプログラムの神髄は「これまでシーズ(技術)視点で研究してきた医療人材に、徹底的にニーズ(顧客)視点で考えるようにしてもらう」ことです。バイオデザインを受講したことがある人に聞いた話では「このプログラムは、医療現場に行き、人々をひたすら観察し、そこから医療従事者が何に困っているのか(ペイン)、何があると喜ぶのか(潜在的なニーズ)の発見をすることから始まります。それら一連の実践的体験は、医療関係者として経験したことのないことでした。まさに視点やものの見方が変わっていくのを感じました」とのことでした。
池野先生が日本に広めた「バイオデザイン」については、2022年に創設者のポール・ヨック教授から、現代表のジョシュ・マコーワー先生にバトンタッチされました。ジョシュ・マコーワー先生にもインタビューしましたので、後日この連載の中で記事として掲載予定です。
※この記事はジャーナリスト尾川真一(フルブライト奨学生)とともに取材しました。
池野文昭(いけの・ふみあき)◎スタンフォード大学医学部循環器内科 主任研究員。浜松市出身。自治医科大学卒業後、9年間、僻地医療に携わる。2001年からスタンフォード大学循環器科で医療機器ベンチャーと共同研究を開始。2013年にMedVenture Partners共同創業、取締役。2014年からバイオデザインの医療機器分野の起業家養成講座で教鞭をとる。