福島:今年4月でキャピタリストとしてのキャリアが10年目に突入したのですが、そのなかでもカケハシのふたりは、最初に会ったときに投資したいと思った数少ない起業家です。僕は母方の実家が薬局で、「Musubi」の構想と業界の抱えている課題を認識しやすかったという背景もあるのですが、それ以上に業界への理解とネットワークが豊富な中尾さん、ビジネスIQが高くキレキレに頭がさえる中川さんのふたりが魅力的でした。実際、創業当初に語っていたシナリオ通りに成長している点は、日本のスタートアップのなかでも極めてまれだと思います。
中川:カケハシは薬局の業務を最適化する単なるバーティカルSaaS企業なのではなく、日本の医療を変える会社でありたい。Musubiは、その第一歩としてつくったもの。全国の薬局の10%以上に採択先が広がってきたいま、元々描いていたビジョンにようやく僕らの器が追いついてきて、次のステップに進められる。患者さんの医療体験をより向上させることや、医薬流通の課題解決などに領域を広げていきます。
福島:創業のタイミングから400件、プロダクトをつくってからも相当数の薬局をヒアリングしたことは、顧客に対する理解を深めて、成長につながったひとつの要因でしょう。それから、マネジメントの変化スピード。スタートアップの成長は一般的に非連続的で、カケハシも直線的に伸びたわけではないですけれど、振り返ってみると、経営チームの拡充と役割のアップデートのタイミングで、ふたりが応用力を発揮することで、会社が有機的に機能している。例えば、前職はソフトウェアテスト企業のSHIFTで活躍した清田(紘佑・執行役員)さんが入ってからは、エンタープライズのチェーン店向けのビジネスに弾みがつきましたね。
中川:僕も中尾も、自分にないものをもっている「超すごい人」を採用していかないと非連続の成長はつくれないと思っているんです。誰ひとりとして同じ価値観と個性をもっていないから、ひとつの事象を見てもいろんなとらえ方が出てくる。動物園みたいですが、全員が心の底から同じビジョンに向かって突き進んでいるからこそ、うまく回っています。