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2023.07.24 16:00

日本発のがん検査サービス「N-NOSE」が世界へ進出

バイオベンチャー、HIROTSUバイオサイエンスの成長が目覚ましい。線虫の嗅覚を利用し、尿1滴で今のがんのリスクを判定する、がん一次スクリーニング検査「N-NOSE(エヌノーズ)」を開発した同社は、2016年8月の創業からわずか5年で評価額1000億円を突破。23年のダボス会議では唯一日本のスタートアップとして招かれ、存在感を示した。

経営者人材の不足から、大学発ベンチャーは成長戦略を描けないまま埋没していく事例が多い。25年間、生物学者として実績を積んできた広津の軌跡からヘルスケアの未来に迫る。


「N-NOSE」は約2年で利用者数30万人を突破し、23年にはすでに40万人を超えたという。法人での導入企業は1000社から1500社超へと拡大を続けている。

そして6月12日、世界保健機関(WHO)により設立された慈善団体「WHO財団」とイスラエルのベンチャーキャピタルOurCrowdが運営する新ファンド「Global Health Equity Fund」(以下、GHEF)の投資先に選ばれ、MOUの調印に至った。

今後は、GHEFによるアドバイスやパートナーシップの確立、支援やPR活動、世界各地の臨床機関と規制当局などへのアクセスといったサポートを受けることになる。

線虫の嗅覚を活用したがんのリスクを判定する日本の技術が世界へ

GHEFは、主に医療提供体制が脆弱な低・中所得国に暮らす人々の健康状態改善に向け、画期的な技術を⽤いた新医療を浸透させることを通じて収益獲得を⽬指すインパクト投資ファンドだ。

運営団体であるWHO財団は、投資先にHIROTSUバイオサイエンスを選んだ理由として、生物を用いた革新的な技術と確かなエビデンスがありながら、低コストで導入できることを挙げ、世界中の人々にがんの早期発見を促すことができると評価した。

今回の提携を受け、広津は「夢がようやく叶ってきた」と話す。

「研究者になったころから、いつか自分が発明した技術を世界に届けたいと思っていた。特に医療体制の整っていない国に届けることは、個人や一企業だけの力では叶わない。WHOとネットワークを築けるご縁をいただき、とても感謝しています」

生物学者ゆえの発想力で新しい市場を開拓

HIROTSUバイオサイエンスが創業5年でユニコーン企業となった背景には、広津が生物学者として歩んできた経歴にある。

九州大学で線虫に関する研究を行なっていた広津は、ある日、犬ががん患者の匂いを嗅ぎ分けられることを知る。実は線虫の嗅覚受容体数は犬の1.5倍、さらに低コストで培養できる。これをきっかけに「線虫の嗅覚も利用できるのでは」と研究を重ね、2013年、線虫ががん患者の尿と健常者の尿を嗅ぎ分けることができることを発見する。15年には論文を発表し、その半年後に起業。研究者として大学に籍を置きながら、CTOとして参画した。

しかし、ベンチャーならではの課題に直面する。

「最初の起業では、アントレプレナーの勉強をしていた方に社長になってもらったのですが、うまくいかなかった。ベンチャーなので当然のことではありますが、投資家などに向け、競合との違いや優位性ばかりを主張してしまう。しかし、そもそも日本人はがん検査に行く人が少なく、市場が小さい。その中でいくら強みを訴えても投資家の心を動かすことはできなかった」

この経験から、広津は自らが先頭に立つことを決意。2016年にHIROTSUバイオサイエンスを立ち上げた。線虫ががんの匂いに反応するという事象が、がん検査においてどの位置づけになるのかなどを徹底的に分析するとともに、経営者としても手腕をふるう。




「線虫はがん種の特定はできなくとも、がんの匂いを嗅ぎ分けることができる。これはがん検査の入口という位置付けになるのではと考えました。またその検査が高性能で簡易的、さらに安価となれば市場を広げることができると思いました」

広津は、がん検査における「一次スクリーニング」というこれまでになかった概念を確立する一方で、商品化を目指す臨床研究でも研究者ならではの機転を利かせていた。

科学領域におけるサービスの提供には、確固たるエビデンスが必要になる。そのためには繰り返し臨床研究を行い、データを集めなければならない。

「我々はベンチャーで資金がない。そこで臨床実験によって得られた研究結果を大学側に譲渡することにしました。大学の研究に我々が協力するというかたちをとることで、資金面の負荷を減らすことができたのです」

線虫は人間のメカニズムを解析するための基礎研究として用いられる生物。広津は新しい技術に対する研究結果を求める研究者が多くいることを熟知していた。

その結果、創業から4年で15種類の早期がんの今のリスクを判定する「N-NOSE」を実用化。そしてユニコーン企業へと一気に駆け上った。

一次スクリーニングから次の段階へ。ペット用検査もスタート

23年1月には「N-NOSE」の次世代型がん種特定検査の第1号となる「N-NOSE plus すい臓」の提供を開始した。広津は早い段階から、遺伝子操作技術により特定のがん種にのみ反応性の変わる線虫を作ることができるはずと考えていたと話す。

「線虫は約1200種類の嗅覚受容体遺伝子を持っています。これらの中から特定のがんに反応する受容体を見つけ出すことは容易なことではありませんが、私は研究者時代にすでにこの研究をしていました。当時は結果を出すのに5年ほどの月日を要しましたが、近年、半年ほどに短縮できる方法を見つけ出しました。今後はすい臓だけでなく、ほかのがん種にも応用できるよう技術開発を進めています」

 また、同年5月には、愛犬用 線虫がん検査「N-NOSE わんちゃん」のサービス提供もスタート。

「そもそも犬にはがん検診という習慣がありません。しかし犬のがん罹患率は人の8倍ともいわれており、飼い主が異変に気付くころには病状が進行していたというケースが少なくない。全身麻酔をしてCTやMRIを行っても、手遅れで命を落としてしまうことがある。そうなる前に検査でリスクを判別できる技術は、歓迎されるはずだと確信を持っていました」

ペットでのがん検査はビジネスの観点からみても利点が大きい。データ量を増やすことで家畜などの検査も可能になる。開発が進めば、事業の多角化にもつながっていく。

今後はビッグデータの活用やコンソーシアムも視野に

HIROTSUバイオサイエンスは創業時より「革新的技術の創造をもって人類の健やかな未来に貢献する」を掲げている。そこには研究開発型企業としての誇りと、高精度かつ独自の技術で事業を切り開いていく思いが込められている。

「​​研究者のときから独自の技術をより多くの人に届けたいと思ってきました。そのためにはグローバルで戦えることが大事。日本の常識や固定概念に囚われず、海外を見据えたビジネススキームを構築していきたい」



また広津は、新しい技術を提供していく企業として、ソリューションとリスクのバランスを見極めながらスピード感を持って前進していくと話す。

「技術やサービスがいかに高性能で優れていても必ず勝てるわけではない。資本力の強さや技術の目新しさなどが勝つこともある。そう考えると、なによりスピードが重要になる。まずは使ってくれる方を増やしていく。私はリスクの大きさと成功の大きさは比例すると考えています。さまざまなリスクがある中で、どのリスクを背負うか。覚悟を持って挑むことで成長スピードを上げ、事業を拡大していきたい」

さらに同社は、世界進出を実現することで、ヘルスケアにおけるビッグデータを保有する企業という新たな価値を見出すことになる。

「ビジネスを広げていくという意味では、より多くの方に検査を受けてもらうことが必要不可欠。今回GHEFと提携できたことは大きな成果を生むことができると思っています。また、世界で初めて生物を使った検査を実現させたことで、各国のアカデミアにおいて線虫を用いた新たな技術を開発する動きも出始めています。今後は我々だけで技術を開発するのではなく、より多くの研究者とともに開発ができるコンソーシアムを実現したいと思っています」

Promoted by HIROTSUバイオサイエンス / text by Rikako Ishizawa/ photographs by Setsuko Nishikawa / edit by Aya Ohtou(CRAING)