宇宙

2023.08.17 18:00

宇宙はテストベッド!ユーグレナのミドリムシ博士に聞く宇宙開発の魅力【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#21】

植物であり、動物でもあるユーグレナが持つ可能性

せりか:ところで、ユーグレナとはどんな生き物なのでしょうか?改めて教えてください!
(c) ユーグレナ

(c)ユーグレナ


鈴木さん:植物と動物、両方の性質を兼ね備えた微細藻類で、コンブやワカメなどと同じ藻の一種です。光合成をするので、二酸化炭素と水と光があれば増殖できます。ほかの植物プランクトンと比べると複雑な遺伝子情報を持っていて、研究対象として面白いんです。生き物としての面白さを語り出すと、切りがなくなってしまいますね(笑)。

せりか:鈴木さんは、どういう経緯でユーグレナの研究を始めましたか?

鈴木さん:学生だった頃に所属していた研究室に、ユーグレナによって食料問題と温室効果ガス削減による温暖化対策、2つの課題を解決することを掲げられていた先生がいらっしゃったんです。

温暖化対策には植物を育てて、光合成で二酸化炭素を減らすアプローチも実効性があると思いますが、限界もあると思っています。しかしユーグレナは、砂漠でも水槽を設置すれば育てられますし、育った細胞には色々な用途があります。当時の技術では、ユーグレナを大量には培養できなかったのですが、実現できればすごく面白いなと思い、先生の考えに共感しました。

そして2005年、私が25歳のときに仲間と一緒にユーグレナ社を起ち上げました。同年にユーグレナを大量に培養できるようになり、その規模をどんどん拡大しながら、バイオ燃料をはじめ、多岐にわたる研究を進めて事業展開の幅を広げています!

せりか:ユーグレナの事業では、食品だけでなくヘルスケア商品やバイオ燃料の開発にも取り組まれていますね。どういう発想で事業を拡大されているのでしょうか?

鈴木さん:私たちは創業当初から「バイオマスの5Fモデル」を戦略として掲げ、進む研究領域や事業領域を考えています。やはり価値があると思っていただけるものを、光合成で生み出して提供していきたいからです。
(c) ユーグレナ

(c)ユーグレナ

せりか:食料(Food)・繊維(Fiber)・飼料(Feed)・肥料(Fertilizer)・燃料(Fuel)、この頭文字を取って5Fモデルと呼んでいるんですね!

鈴木さん:そうですね。会社を立ち上げたときも、バイオマスの5Fモデルの中で最も優先順位が高い食品から事業を始めることになりました。

民間だからこそ実現できる研究開発

せりか:鈴木さんは、ユーグレナの研究を大学でも続けられたのではないかと思います。スタートアップやベンチャーで研究しようと考えたのはなぜですか。

鈴木さん:やはり若い研究者が多額の研究費をもらうのは、今の日本のシステム上だと結構難しいことが理由の一つです。関連して、ユーグレナを培養する大型の設備に投資が必要になる、あるいはすでにある装置を使っても、1回の生産に100万円程度かかることが試算されていました。こういう取り組みを20代の若手研究者が、大学の研究室でやろうとすると、かなり長い時間がかかってしまうんです。

今でこそ論文をたくさん書いて、学術界における信頼を得て、政府からのご支援もいただけるようになりました。しかし当時は株式で資本を獲得して、大量培養に関する研究開発費を出すことが、一番スムーズで合理的だと思いました。

せりか:鈴木さんは、文部科学省の宇宙開発利用部会の委員を務めていらっしゃいますね。

鈴木さん:はい!部会では国の予算としても限度がある中で、どうすれば日本がプレゼンスを大きく発揮できるかを考えさせてもらっています。

私の肌感では、ユーグレナを起ち上げた頃と比べると、スタートアップの声は政府に届きやすくなっていると感じています。今の政府もスタートアップを支援すると表明していますし。未来は明るいと思いますよ!
次ページ > 2025年、ユーグレナが宇宙へ!

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事