西陣織の老舗から高級テキスタイルメーカーへ、世界を目指し進化する「細尾」

糸と織りの綿密な検査。織物にはそれぞれに複雑な水準があり、最高の品質を保証するために、職人たちは織りの全工程を通して常に精査している(写真提供:細尾)

西陣織の老舗「細尾(HOSOO)」が、伝統を守りつつ、顧客のニーズにあった現代のブランドへと進化する道を見いだした経緯を、創業家の12代目にあたる細尾真孝社長が語る。

──細尾の高級西陣織の製造プロセス、起源、関係する各種の工程と技術、そうした技術をもつ職人について教えてください。

新しい製品をつくるとは、着物と帯にとどまらない、新たな価値を創出するということです。細尾は2010年、幅150cmの西陣織を織れる織機を独自に開発しました(もともとの西陣織の幅は32cm)。これにより、インテリア、ファッション、アート、科学技術といった分野の国際市場に、革新的な織物を提供できるようになりました。

西陣織は、1200年ほど昔に京都で、公家や武家などの上流階級の支援を受けながら生み出されました。そうした織物や技術の起源は、5世紀と6世紀ごろに中国から伝わったものです。西陣織は、布を織る前に染めた糸と、金箔や銀箔を細く切ってじかに織りこむ「箔」と呼ばれる特別なタイプの糸を使うことで知られています。製造工程の複雑さでは、世界屈指の構造と言われています。

西陣織の製造には20を超える工程が必要で、それぞれの工程を熟練の職人が担います。例えば、製糸、経糸と緯糸の調整、織機の調整、デザイン開発などの工程があります。当社は最後の工程を担い、すべての材料を1つに織りあげて細尾ブランドの織物をつくっています。

──細尾が掲げる「More than Textile」というコンセプトについて教えてください。このコンセプトは、新しいテクノロジー、素材、デザインを追求する細尾を象徴していますね。これまでに西陣織に採り入れた、特に革新的なテクノロジーとしては、どのようなものがありますか?

細尾は「More than Textile」という姿勢の下、職人だけでなく、別の分野や経歴のスペシャリストたちとコラボレーションする価値を重視しています。そもそものきっかけは、建築家ピーター・マリノと出会い、その後に控えていたプロジェクト(世界中のディオール店舗の内装)に使う織物の開発を依頼されたことです。彼の要望に応えるためには、世界的に業界標準とされている幅150cmに対応できる織機を開発する必要がありました。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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