政府がもう1つの野望を実現するためにもっと努力していれば、こうした事態に直面することはなかっただろう。習近平国家主席はたびたび、中国を現在の低・中熟練製造業中心経済から、より高度なサービス経済へと移行させたいとの意向を示してきた。もしそうなっていれば、失業中や能力以下の仕事に従事している大卒者のために多くの職が用意されていただろう。だが、その野望は今となっては現実的というよりも美辞麗句に過ぎなかったようだ。
実際、習主席は特定の製造業や鉱業で世界的な優位性を獲得することにも重点を置いており、先の野望とは相反していた。さらに言えば、こうした覇権への野心のせいで、政府は本来ならサービス経済の方向に向かうはずの消費者志向の中小企業に対する信用を否定してきたのだ。
他の国も同じような問題を抱えている。先進国の多くは大学を重視し、学位に見合った仕事に就けない大卒者を過剰に抱えている。ところが、計画経済を標榜する中国は、他のどの国よりも厳しい状況に置かれている。
もし中国政府が大規模な大学制度を構築し、そこに多額の資金を投入していなかったら、同国には今必要とされている製造業に従事する労働者がもっといたかもしれない。もし政府が政治的に優遇されているが融通の利かない国営企業を通じて政治的に優遇された事業を大々的に推し進めるために、中小企業の信用を飢えさせていなければ、政府が口先だけの主張しかしてこなかったサービス経済が実現していたかもしれない。しかし、そうはならなかった。
中国は今、若者の失業という自ら招いた深刻な問題に直面している。それはまた、権威ある中央計画が意図しない結果を招き、暗黙の危険性をはらんでいることを世界中に知らしめることとなった。
(forbes.com 原文)