アジア

2023.07.30 09:00

外国企業で進む「中国離れ」 口先とは裏腹の現実

遠藤宗生

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外国企業の中国での事業展開については、同国政府も企業側も甘美な言葉を繰り返しているが、現実はそう甘くはない。

中国当局はビジネスに対してオープンな姿勢を強調し、外国からの投資を歓迎すると主張しているものの、中国での事業展開はこれまで以上に難しくなっている。企業経営者たちは対中国のエンゲージメント(関与)を口にしながら、ドル、円、ユーロ、ポンド、ウォンなどあらゆる資金を他国に送金している。関係者全てにとって厳しい状況だが、最も厳しい展開が中国を待ち受けているのは間違いない。

公式発表だけ見れば、貿易と投資の見通しは好調に見える。中国外交部の毛寧報道官は最近、「外国企業が中国に投資して事業を行い、中国市場を開拓し、発展の機会を共有することを歓迎する」「中国はハイレベルの開放を推進し、市場志向で法に基づいた国際的なビジネス環境の醸成にしっかり取り組んでいる」と述べた。

企業側からは、米銀行大手JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が米中間の「真のエンゲージメント」を呼び掛けた。上海に電気自動車(EV)大手テスラの工場を構える企業家のイーロン・マスクは、中国の秦剛外相(当時)と会談し、米中経済のデカップリング(切り離し)に対する拒否感を共有した。

しかし、現実はそのような明るいコメントとは裏腹だ。最も注目すべきは、中国で活動する外資系コンサルティング会社、監査法人、法律事務所がこのところ相次いで中国安全保障当局による捜査対象となっている点である。

米企業調査会社のミンツ・グループの報告によると、同社事務所は今年3月に中国治安当局員による抜き打ち捜索を受け、従業員5人が拘束された。米コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーも、上海事務所が同様の家宅捜索を受けたと明らかにした。このときは従業員は尋問されただけで拘束はされなかったという。中国国営メディアは、治安当局がコンサルタント会社キャップビジョン・パートナーズを捜査していると報じた。

いずれの事件においても、中国当局は捜査の理由について「国家安全保障上の懸念」という漠然とした説明しかしていない。在中国米国商工会議所のマイケル・ハート会頭は、これらの企業が事業の一環として収集している情報が捜査に関連しているとみており、その推測を基にこう問いかけている。「将来の提携相手に対してデューデリジェンス(詳細な事前調査)を実施できない状況で、どうやって将来の投資計画を立てられようか」
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翻訳・編集=荻原藤緒

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