だが、この段階にあっても、より一般的な細菌性髄膜炎などの病気と間違われることが多い。先にも言ったが、脳食いアメーバが真っ先に人の脳裏をよぎることはあまりない。このアメーバが実際に脳内のいたるところにいてもだ。
このように診断と治療が遅れることから、発症から18日間以内の致死率はほぼ100%となっている。1962~2022年の間にCDCに報告された症例は157件のみだが、学術誌Journal of the Pediatric Infectious Diseases Societyに発表された論文によると、米国で1962~2018年にPAMを発症した人のうち、生存したのはわずか4人。感染者の半数は、症状に気付いてから5日以内に死亡している。
このように、致死率が非常に高いため、アメーバが脳に入らないようにすることが大切だ。つまり、淡水が鼻の中に入らないようにする必要がある。湖や川、温泉、未消毒の水が使われているプールに入る際には、鼻をつまんだり、鼻栓をつけたりしよう。
また、水道水を使った鼻洗浄も要注意だ。米国では過去に、頻繁に鼻洗浄をしていた女性の脳に違うタイプのアメーバが入り込み、感染症を起こした事例が報告されている。
さらにもう1つの注意事項として、フォーラーネグレリアは土の中にも存在する。なので、土を鼻に詰め込むのもNGだ。もちろん、アメーバがいなくとも土を鼻に詰め込むべきではないのだが。
幸い、フォーラーネグレリアは、どんな地域にも存在するわけではない。このアメーバは、温かい水を好む。CDCによると、これまでの感染例の大半は米本土の南側15州で夏に起きており、うち半分以上がテキサスとフロリダの南部2州で報告されている。ただし、気候変動により気温が上昇すれば、近い将来、北側の州でも感染例が確認されるようになるかもしれない。
(forbes.com 原文)