「脳食いアメーバ」の死者、米国で相次ぐ 7月に2人死亡

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「脳食い」とのニックネームがつくものは何であれ、好ましいものではないことは想像に難くない。「脳食いアメーバ」と呼ばれるフォーラーネグレリア(学名Naegleria fowleri)がまさにそうだ。米国では7月、このアメーバによって2人が死亡した。

1人目の死者は7月20日、ネバダ州の保健当局により発表された。死亡したのは「若年者」で、同州の天然温泉アッシュ・スプリングスを訪問した後に亡くなったという。後に、死者は2歳の幼児だったことが明らかになっている。

2人目の死者は7月28日、ジョージア州の保健当局により発表された。同州在住の人物で、州内にある淡水の湖か池で泳いだ際に感染したとみられる。死亡した人物や感染場所の詳細は公表されていない。

フォーラーネグレリアは、その通称にふさわしい恐ろしい病原体だ。主に温かい淡水に生息し、汚染された水が鼻から体内に入ることで感染する。まるで鼻が脳の入り口であることを知っているように振る舞い「食事」となる脳に到達するまで泳ぎ続ける。おぞましい存在だ。

フォーラーネグレリアが脳に与える損傷は、原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)と呼ばれる。髄膜とは、脳をラップのように包んでいる膜のこと。つまり、人の脳をビュッフェのようにむさぼるアメーバにより、脳とそれを覆う膜の広範囲に炎症が生じるのだ。

脳は生きるために必要なものだ。それが食べられてしまうPAMは、適切な治療を受けないと死につながる。ただし大きな問題は、感染に気付きにくいことにある。

このアメーバは、人の鼻や脳に入る時に「お邪魔します」などと言ったりはしない。食事の最中も、人とは違ってくちゃくちゃ音を出してかんだり、しゃべったりしはない。

感染後1~9日間は自覚症状がないことがある。発熱や吐き気、嘔吐(おうと)、前頭部の痛みといった症状が出始めても、別の病気だと思って気にとめないかもしれない。人は頭痛があっても、真っ先に「脳食いアメーバかも」とは思わないものだ。米疾病対策センター(CDC)によると、感染の第1段階でPAMの診断と治療を受けられるケースはまれだ。
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翻訳・編集=遠藤宗生

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