白馬駅の隣の南小谷駅がJR東日本とJR西日本の境界線とあり、なかなかプランが通らなかったが、粘り強くSNSで発信し続けたところ、応援者が現れた。雪月花を白馬まで乗り入れる話も浮上し、来年には美食と美酒に酔いしれる観光電車が実現するという。こうした事例もフードデザインの一つだ。
「電車が走ることで点と点が結ばれ、線になります。さらにそれが面になれば、美食経済圏ができます。白馬村のポテンシャルを広げるためには、富山、金沢、新潟との連携が必須だと、この10カ月で実感しました。県境を越えた官民連携での美食経済圏の構築です。そうすることで、インバウンドも含めたガストロノミーツーリズムが発展していきます」
カノリーリゾーツは、昨年12月にオープンしたばかりだが、年末年始のわずか2カ月間に香港時代の顧客をはじめ、20カ国以上の海外の富裕層がわざわざ白馬村に来て宿泊し、灼麓館で長屋氏の料理に満足して帰っていったという。可能性として感じていたものは確信になりつつある。
もう一つ、長屋氏は大きな目標がある。白馬界隈のレストランに数人いる同窓生(武蔵野調理師専門学校)と協力して調理師学校を作ろうというのだ。調理師学校は東京や大阪の都市圏に集まっているのが現状だ。だが、これからの料理人は自然に直に触れ、地産地消を実感することが強み、あるいは必須になる。だからこそ、分校であれ、ワークショップ形式であれ、白馬に調理師学校を誘致したいという。
世界を見て、世界で働いてきたからこそ見えてきた、里山の価値。その宝を余すことなく駆使しながら、日本のガストロノミーの価値を高める。長屋氏が目指すフードデザインの発展が楽しみだ。