ヘンリー:日本の文化は独特です。日本ではほとんどの人が同じ社会習慣を持っているので、人々はとても似ています。だからこそ、日本人としてのアイデンティティを明確にするには、日本から一歩踏み出す必要があります。その時に、どんな意図で国外に出るのか、一歩引いて考えてみる必要があります。
最近、学生時代にニューヨークに行ったことのある2人のリーダーと話をする機会がありました。1人は学者で、ニューヨークでは英語で学ばなければいけないので勉強についていくのがとても大変だったそうです。彼は1年間アパートの自室で勉強し、帰国します。その時「ああ、ニューヨークも日本と同じだった」と思ったそうです。その後、彼は日本企業に入社し、グローバルへの興味を失ってしまいました。
もう1人のリーダーはサッカー選手で、大学生くらいの年齢でニューヨークに出て、地元のサッカークラブに入りました。週末には試合に出て、そのあとは仲間と酔っぱらっていました。彼はギターを弾いたので、バンドにも参加しました。バンドの人たちから他のキャンパスでの活動も紹介されました。彼は英語の勉強にあまり時間を割きませんでしたが、現地の友だちがたくさんいたおかげで英語が得意になりました。
それから25年ほどが過ぎ、1人は今グローバルリーダーとして大成功を収めていますが、もうひとりは正直言ってかなり平凡でした。このように結果をわけたのはマインドセットの問題だと思います。
日本の外で素晴らしい経験をして自分を成長させ、その経験によって、地球市民に近づくことができるか。交換留学生制度で留学しても、企業がグローバルな経験をさせるため社員を海外に派遣しても、問題は彼らがそこで何を身につけてくるかということです。英語も現地の言葉も学ばず、ただ日本のコミュニティの中で数年業務に携わるだけでは、何の成長もないまま帰国することになるでしょう。
中道:グローバルの場では、人と一緒に楽しむ能力は本当に重要ですよね。音楽でもスポーツでも何でもいい、共通のものがあれば、そのことについておしゃべりを始めることができますから。
ヘンリー:僕はグローバルな視野を持った日本人のリーダーをどう育成するかという課題に対して、日本のグローバルリーダーたちがどのような共通体験をしているのかを研究するプロジェクトを立ち上げました。