欧州

2023.07.28 08:30

クリミアのロシア軍補修拠点をウクライナのSu-24が巡航ミサイルで叩く

いずれにせよ、今回の攻撃はロシア側にとっては不吉な兆候だ。ウクライナ空軍はまだSu-24を数十機保有している可能性があり、ストームシャドーやそのフランス製版「スカルプ」についても、クリミアやほかの占領地にあるロシア軍補給拠点を継続的に攻撃していくのに十分な量を確保しているかもしれない。

車両置き場も安全ではない。たとえ防空部隊に護られていてもだ。ステルス性能をもつストームシャドー/スカルプは迎撃がきわめて難しいことがわかっている。射程はウクライナに供与されたタイプでも最大250キロメートルに達する。

ロケット砲、ドローンそして巡航ミサイルと、ウクライナが深部に対する攻撃能力を急速に高めていることへの懸念から、ロシアはすでに昨年、補給拠点を前線からさらに離れた場所に移すようになっていた。

前出のCITは、ウクライナ軍はそのため「より後方にある既知の補給拠点を目標にせざるを得なくなった」と解説している。ノボステプネと前線からの距離は150キロメートル弱。Su-24がウクライナ側の安全な場所からストームシャドーを十分撃ち込める距離だ。

ウクライナ南部に展開しているロシア軍の野戦部隊は、大規模な補給拠点をクリミア南部などさらに奥に引っ込めることもできるだろう。だが、それによってストームシャドーの脅威を減らせても、完全に取り除くことはできない。

ウクライナ空軍は昨年、南部の自由港オデーサの南約130キロメートルに浮かぶズミイヌイ(スネーク)島を占拠していたロシア軍部隊に継続的な爆撃を実施し、このエリアでの作戦行動能力を証明している。このロシア軍守備隊は昨年6月末に撤退に追い込まれている。

ズミイヌイ島からクリミアへの距離は160キロメートルもない。Su-24は黒海西部の上空から、クリミアのあらゆる場所を巡航ミサイルの目標にできるということだ。

ロシア側は補修拠点をたんに移動させるのではなく、分散させることも可能だろう。確かにそうすれば、ウクライナ側はより小さな目標をより多く目標に据えなくてはいけなくなるため、全体的なリスクは下がるかもしれない。だが、兵站は規模がものをいう以上、分散すれば効率性が低下する。言い換えれば、車両の修理ペースは落ちることになる。

つまり、どうやってもウクライナ有利・ロシア不利という関係は動かない。ウクライナ軍の巡航ミサイルによって、ロシア軍がウクライナ南部で旅団に完全な装備をさせ続けることは一段と難しくなっている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事