欧州

2023.07.25 10:30

ウクライナ軍が予備旅団を投入、直後に複数の戦車失う

ポーランドがウクライナに供与したPT91戦車(shutterstock.com)

ポーランドがウクライナに供与したPT91戦車(shutterstock.com)

ウクライナ軍は6月4日、南部ザポリージャ州と東部ドネツク州のいくつかの戦線でついに反転攻勢を開始した際、最も装備の整った旅団を数部隊投入しつつも、部隊の半分以上は予備として保持した。

すべては計画の一部だった。米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は記者会見で、「ウクライナの強力な予備部隊は、同国が選ぶ最適な時と場所で出陣すべく待機している」と説明している

当初の作戦は、先陣の旅団がロシア軍の防衛の隙を探り、後続の旅団がその隙を広げて突破できるようにすることだった

だがここにきて、ザポリージャ州ではこれまで予備部隊だった旅団が戦闘に加わり、損害を被っているようだ。第22機械化旅団は7月9日前後に南部で行われた攻撃で、T72系の戦車2両(ポーランドが供与したPT91とチェコが提供したT72EA)を放棄したとみられる。

第22機械化旅団は、ウクライナ軍でPT91を運用していることが唯一確認されている部隊だ。ただし、この旅団が行動を開始したとみられるからといって、ウクライナ軍が今月初めにロシア軍の防衛線に大きな穴を開けたわけではない。むしろ、それを示す証拠はない。

ウクライナ軍の指揮官らが、延々と広がる危険な地雷原に遭遇した各旅団に対し、リスクの高い地雷原突破ではなく減速を命じたことは、周知の事実だ。

英国のベン・ウォレス国防相は米紙ニューヨーク・タイムズに「地雷原の中をロシア軍の陣地に向かって突き進むという、他の軍でもしなければならないことをウクライナ軍は行っている」と語った。

同時にウクライナ軍の指揮官たちは、新たに配備された欧米製大砲と、それが発射する米国製クラスター弾が、南部戦線沿いのロシア軍の大砲に勝っていることに気づいたようだ。ウクライナ軍が榴弾砲を1門失うごとに、ロシア軍は榴弾砲を4門失っている。

攻撃側の軍は通常、防衛側よりもはるかに多くの犠牲を払うことになる。防衛側は守りに徹することができる一方、攻撃側は無防備な地域を進軍しなければいけないためだ。だがウクライナ軍の火力支援は急速に向上しており、攻勢に回るウクライナ軍の旅団が、守勢に回っているロシア軍の旅団や連隊に同じくらいの損失を与えられるようになっている。

そのため、ついにザポリージャ州に到着した第22機械化旅団が、ロシア軍の防衛線に開いた大きな穴に突入したとは限らず、ウクライナ側が続けている大砲を主とした持久戦に加わっただけだったかもしれない。同旅団が今月初め、ザポリージャ州で戦車などの車両を失ったとみられることは、それが消耗戦の結果だったと考えれば筋が通る。

第22機械化旅団の大隊の1つが前進を試みた際、一部の戦車が地雷を踏んだ可能性がある。ロシア軍の大砲による攻撃を受けたため、乗員は脱出。その結果、ウクライナ軍で初となるPT91戦車の損失が確認されたというシナリオだ。これが最後の損失とはならないことは、ほぼ間違いないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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