スタートアップ

2023.08.08 16:30

佐賀のスタートアップのイベントには「あきらめの悪い」人たちが集う


────県内でIT人材育成もしっかり行っているのですね!

北村:「SAGA Smart Samurai」では、約4カ月間、Pythonを中心としたプログラミングを学んでいます。200名の定員に対して860名もの応募が来るほど人気のプログラムです。それほどIT産業に興味を持ち、「やりたい・変えたい」と思っている人が佐賀にはたくさんいるのだということを実感しています。

しかし、実際にデジタル技術の活用やDXに取り組む企業は多くはありません。今はまだ、意欲や関心が比較的高い企業が率先して取り組んでいる段階。企業からは、しばしば「DXなんて大手の話だよね」と聞きますが、実は小さな組織(10-20名)ほどやりやすい面があります。意思決定や合意形成も早いし、業務の変革も柔軟に行えますから。さらには、人材不足も解決できます。

部門が分かれ大きく組織が成長するほど、逆にDXは遅れてしまう。だからこそ、ここにも地方のアドバンテージがあり、だから小さな企業がDXに取り組む意味や意義があると思っています。

他県と一線を画す“佐賀型”スタートアップ支援




────では、続いてスタートアップ支援の取り組みをお伺いしていきます。“佐賀型”のスタートアップの育て方とは、どのような取り組みなのか教えていただけますか?


村川:“佐賀型”のスタートアップ支援の特徴の1つは、「始める→磨く→繋ぐ」といった起業フェーズに合わせた3段階の個別指導プログラムを行っていることです。

これから起業を考えたり、起業して間もないフェーズには、「Startup Gateway SAGA」というプログラムがあります。専門家や先輩起業家と意見交換を行うことができるイベントの開催、年度後半には数社に絞ったアクセラレーションプログラムを実施し、様々な専門家からの指導を受けながら短期間でビジネスをブラッシュアップしていきます。

起業後、これからもっと事業を大きくしようとした時に立ちはだかるのが“資金調達”の壁です。VCや投資家からの資金調達を成功させるために、出資に見合う事業へ現役投資家が事業を磨き上げるプログラムが「Startup Boost SAGA」です。

そして事業をより拡大させていく中で、協業先や販路の開拓が必要となります。それを支援するプログラムが「Startup Connect SAGA」です。ここでは商談先やパートナー企業とのマッチングを目的としています。このようにフェーズに応じた3段階のサポートを、各プログラム別にそれぞれ専門的な知見を持つ民間企業に事業委託して運営しているんです。

────民間企業がそれぞれ受託して運営しているんですね!? 事業を分けるほど手間もかかりそうですが、あえて3つに分けて運営する理由は何かあるのでしょうか?

村川:もちろんおっしゃるとおりで、1つの企業に委託してしまえば事業管理はラクです。でもそれでは起業家がそれぞれのフェーズに応じて抱える課題に対して、最適な支援とならないのでは、と考えています。それぞれのフェーズに対して最も専門的な知見を持つ民間企業に事業委託することで、佐賀から世界を目指す起業家にベストな支援を提供できるようにしています。
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文=松中朱李

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