────DX(デジタルトランスフォーメーション)というと、捉え方は様々だと思いますが、DXスタートアップ推進室が考えるDXの定義は何でしょうか?
松雪:私たちは、“トランスフォーメーション(=変革・変化)”の部分にウェイトを置いていて、デジタルの利便性を知ることで「人」が変わることが大事だと思っています。
自分たちの考え方ややり方を、まず「変えよう」とする意思が大事なんです。その想いに対して、デジタルをどう使っていくか、これがDXの定義と捉えています。
────なるほど、たしかにまず「人」が変わらなければ、DXは推進できないですね。では、具体的に事例を教えていただけますか?
松雪:まずはすごく身近な、しかしだからこそどこの企業でもありうるバックオフィスについての事例なんですが、財務系クラウドサービスの導入で、毎日数時間かけて手入力で行っていた事務作業を、30分程度で終わらせることができるようになった例があります。DXによって時間を抽出できたことで、今まで事務作業に追われていたはずの時間を、現場での工事の管理や資格取得などのために活用できるようになったんです。
このように、クラウドサービスなどSaaSの導入で、これまで普通だと思っていたことが「こんなに簡単にできるんだ!」と、気づくことができます。
都市部では当たり前に導入されているSaaSも、小さな企業や地方の企業にとってはまだまだ当たり前ではありません。だからこそ、このような小さなDX事例をもっと作り、まずは便利さを知ってもらうことが大事だと思っています。
────都市部でもSaaS導入は、組織によって差があるほどです…人が減少傾向にある地方企業こそ、小さなDXが大きな変化を生みリソースの確保にも繋がっていくんですね。
松雪:他にも製造業のDX事例として、「株式会社セイブ」のAI・IoT導入のDX事例があります。本企業は電線と支持物のあいだを絶縁する器具「碍子(がいし)」の製造・販売を行う会社です。
製造工程の検査部分に、“画像認識や動作を学習するAIを搭載したロボット”の導入にチャレンジしました。今まで目視検査で行う重要かつ集中力を必要とする部分を、AIの画像認識技術を使うことで1個あたりの検査時間はわずか19秒ほどに短縮することに成功したんです!
他にも、IoTセンサーを製造工程の様々な部分で活用し、リアルタイムで“データの見える化”ができたことで、製造過程の「不具合がどこで起きたのか」を明確化することができるようになりました。
これらの導入において、社員自らが率先してシステムを組み上げたり、データを共有していくことで、会社全体で社員の方のデジタルに対する考え方が変わり、DXが推進される風土が醸成されてきていると感じます。
北村:実は、こうした各社のDX支援とあわせて「SAGA Smart Samurai」という“IT人材の育成プログラム”を行っています。「株式会社セイブ」では、「SAGA Smart Samurai」の卒業生もエンジニアとしてスキルを身につけ活躍しているんですよ。