スタートアップ

2023.08.08 16:30

佐賀のスタートアップのイベントには「あきらめの悪い」人たちが集う

石井節子
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その後、2015年頃からそこにスタートアップの発掘・育成が加わり、やがて産業企画課のAI・IoT推進・創業支援担当というセクションができ、それが独立する形で「DX・スタートアップ推進室」が立ち上がったんですよ。なにせ、役所としての仕事の枠からはみ出してしまう勢いがあったので、良くも悪くもいわば「特区」のような扱いが必要だったのかもしれません(笑)

当初は4名ほどでしたが、現在は8名で運営しており、メンバーの半分以上が民間企業出身者です。そのせいか、クセの強いメンバーも多いです(笑)

お陰様で、佐賀のDXの推進やスタートアップの育成への取り組みは、他県からもたくさんの視察やお尋ねがあるなど注目いただいています。例えば1月には、総務省の田畑副大臣に産業スマート化センターをご視察いただき、あるいは3月にはフィンランド大使館の方々に当室の取り組みをプレゼンさせていただく機会もありました。

────すごいですね!確かに“地方創生”の文脈での起業支援やDXというと、助成金や補助金を支給して終わり…という印象なので、他県から注目を集める理由もうなずけます。ここまでDX・スタートアップ支援に注力する背景には、どのような想いがあるのでしょうか?




北村:私たちがなぜDXの推進やスタートアップの支援をしているのかというと、佐賀を東京や福岡など都市部とは一味違った、地方からのイノベーションの苗床や、そのロールモデルにしていきたいというのがあります。その上で大事なことの一つが、たぶん「あきらめの悪い人」を集めることなんです。

だって、イノベーションって、諦めると起こらない。だからこそ、最後まで妥協しない、あきらめない人が必要だと思っていますし、そういった粘り強く息の長い、本格的な課題解決へのチャレンジって、実は立地コストが高い都会ではなかなか難しい。そこにこそ、地方の勝機があるんじゃないかと。

でも、そんなチャレンジをしたい人であっても、まわりに聞く耳を持ってくれる人が居なければ、仕事や暮らし、あるいは世の中を「変えたいという気持ち」が萎えてしまい、いずれ消えてしまう。なので、そういう人たちに光をあて、フォローしたり、手を差し伸べたりする存在が必要だと思うんです。それが私たち「DX・スタートアップ推進室」の存在意義だと考えています。

無骨で不器用だけど「本当に世の中を変えたい」そう思っている人をたくさん呼び込み、佐賀県からイノベーションを起こすためのサポートをしていきたいんです。

小さな“DX”が生む大きな“リターン”とは



────では、はじめにDX推進の取り組みについてお話を伺えますか?

DX・スタートアップ推進室 松雪氏(以下 松雪):DXの推進は、先ほどお話しに出た「佐賀県産業スマート化センター」で行っています。「佐賀県産業スマート化センター」は、DXを体感できる施設であり、相談できる窓口であり、県内企業と新しいソリューションを繋ぐ場所です。

センターを通じて、色々な人が交わる“マッチングハブ”の役割として、DXの推進をしています。
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文=松中朱李

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