論文共著者の1人であるポール・チャイ(Paul Chai)は、Pinanga chaianaというヤシ科植物の名前の由来にもなっているマレーシアの植物学者で、1997年にサラワク州のLanjak Entimau野生保護区を訪れた際に初めてこのヤシを発見した。チャイ博士は若いヤシの写真を撮るために落ち葉を払っていた時、鮮やかな赤い果実が姿を見せたことに気づいた。その後2018年、キュー植物園のチームが同保護区を再訪し、このヤシの標本を科学研究のために採取した。
「ポール・チャイ博士の助言がなければ、この驚くべき新種を平凡なヤシの実と思って見過ごしていたでしょう」と、キュー王立植物園のFuture Leader Fellow(博士研究員と同等の4年間の役職)で植物学者兼データ・サイエンティストのベネディクト・クーンハウザーは声明で語った。クーンハウザー博士は、植物の進化、同定、保護、特にマレー諸島のヤシ類を専門に研究している。
「おかげで、地中で開花する極めて珍しい植物を科学的に記録することができました。これはヤシ科全体で初めての例です」とクーンハウザー博士は語った。
「まさしく、生涯に一度の発見でした」
論文の主著者であるインドネシアの植物学者アグスティ・ランディは、2017年にカリマンタンで独自にこのヤシを発見した。ランディはシンガポール国立大学および造園の社会普及を通じて豊かな生活と福祉を推進する非政府組織Natural Kapital Foundation Indonesiaに所属している。
ランディが発見したヤシの中で、少なくとも1例はイノシシに掘られた形跡がみられ、他にイノシシに食べられたりつぶされたりしたらしいものもあった。
「2017年に西カリマンタンで初めてこの小さなヤシを見つけた時、Pinanga subterraneaが生えている周辺をイノシシの群れが掘り起こしていました。そして驚くほど鮮やかな赤色の熟した果実がいくつか地面に落ちているのを見つけました」とランディは説明した。
「茎の周りにあったたくさんの土は、イノシシが地中にある果実を見つけるために掘り起こしたものだと気づきました。水たまりの周辺に撒き散らされたイノシシの糞の中にも果実のタネがありました」