「地震魚」リュウグウノツカイが泳ぐ珍しい姿、台湾沖で撮影

1850年頃に描かれたリュウグウノツカイ(Photo by Hulton Archive/Getty Images)

リュウグウノツカイ(学名、Regalecus glesne)は、深度200〜1000mに住む深海生物だ。この種は世界最長の硬骨魚でもあり、体長は4m以上にも及ぶ。伝説上の動物「シーサーペント」目撃例の一部はリュウグウノツカイだったともされている。日本では、地震や津波を人々に警告する使者であるとの言い伝えがある。

2011年の東日本大震災の前、少なくとも10匹のリュウグウノツカイが日本の海岸に打ち上げられていたことから、震災後にはこれら出来事の関係をめぐる臆測が飛び交った。

そんなリュウグウノツカイがつい先日、台湾北部沖の浅瀬でダイビングを行っていた一行により撮影された。台湾はフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む地域にあり、地震が比較的多い。今回の目撃例を伝える英語メディアの記事には、リュウグウノツカイを「earthquake fish」(地震魚)などと呼んでいるものもある。

2015年7月には、南カリフォルニア沖のサンタカタリナ島で、1匹のリュウグウノツカイが捕獲された。同島周辺の海中や海岸で見つかったリュウグウノツカイは、1年半余りで3匹目だった。メディアは当時、リュウグウノツカイの目撃とサンアンドレアス断層付近の地震活動との関係を探ったが、その証拠は見つからなかった。

リュウグウノツカイが一定期間ごとに海面で目撃される理由について、生物学者たちはさまざまな説明を提唱してきた。本来生息する深さには、海流がほとんどあるいは全くない。その結果、筋肉はほとんど発達しないため、泳ぎはうまくない。季節ごとに起きる流れによって容易に海面に押し上げられ、最終的に疲労によって死に至る。

しかし、一部の研究者は、一連のリュウグウノツカイ目撃例と海面温度の異常な状態との間に関係性がみられると指摘している。2018年に発表された研究論文は、数年にわたるリュウグウノツカイの打ち上げとエルニーニョ現象との関係を指摘している。エルニーニョ発生中、海面温度はリュウグウノツカイが住む深さよりも数度高くなる。餌となるプランクトンと小魚は温暖な海に多く生息するため、リュウグウノツカイはこれを追いかけて海面にのぼってくる。
エルニーニョ現象とリュウグウノツカイ打ち上げの相関(R.FEENEY & R.N.LEA 2018/BULLETIN OF THE SOUTHERN CALIFORNIA ACADEMY OF SCIENCES)

エルニーニョ現象とリュウグウノツカイ打ち上げの関係を示した図(R.FEENEY & R.N.LEA 2018/BULLETIN OF THE SOUTHERN CALIFORNIA ACADEMY OF SCIENCES)

一方、動物の行動と地震活動を結びつける統計的に有意な証拠は今のところ見つかっていない。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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