サイエンス

2023.07.25 14:00

「地中」で花を咲かせて実を結ぶ新種のヤシ発見

ヤシ科ピナンガ属には140の種があり、その殆どが小型で、森林下層で見られる。100種以上が東南アジアに生育し、ボルネオは生物多様性の中心である(Randi Agusti / CC BY 4.0)

ピナンガ属に分類されている森林下層の小さな直生ヤシは140種以上ある。そのうちの100種以上がアジアに生育し、ボルネオはそれらの種多様性の中心だ。このヤシは非常に小さく識別しにくいため、他の大きい種の幼生個体と間違えられやすい。しかしピナンガの専門家であるランディは、Pinanga subterraneaを新種として認定する役割を引き受け、このヤシを他のすべてのボルネオ産ピナンガと注意深く比較した結果、科学界の新参者、新種として命名することを提案した。
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geoflory(地中で開花)かつgeocarpy(地中で結実)というのは、顕花植物の中では稀有で奇妙な繁殖戦略だが、どちらか一方は、33科89属の少なくとも171種で発見されている。たとえば、落花生は地中で結実する最も有名な植物だろう。花は地上で咲くが、果実は地中で育つ。しかし、このヤシのように、地中でのみ結実し開花するというのは、極めて稀な現象であり、ラン科リザンテラ属(genus Rhizanthella)で観察されたのが唯一の例だ。「underground orchids」(地下のラン)として知られているリザンテラは、オーストラリアに固有のランの属だ。葉は一切なく、菌根菌と共生している。残念ながら、他のオーストラリア固有の生物と同じく、リザンテラは極めて稀であり、深刻な絶滅危機にある。

この新しいヤシの保護状態はわからないが、そこには地中で花を咲かせる植物について、私たちに教えるべきことがたくさんある。

「Pinanga subterraneaの発見は、地中で花を咲かせる植物に新たな光を当てるものです」と論文の著者らはいう。「この発見は、同じくボルネオで最近発見された、初の地中壺状植物Nepenthes pudica(ウツボカズラの一種)とともに「地球には他にどんな現象がまだ隠れているのか」という疑問を投げかけました」
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「どちらの発見も、ボルネオが生物多様性のホットスポットであることを強調するものであり、そこには私たちを取り巻く生物学的世界に対する考え方を変えるかもしれない未発見種がまだたくさんあるかもしれません。そして、Pinanga subterraneaが科学的に説明されるずっと以前から地元の人たちに知られていたという事実は、地球上すべての生命を分類しようという全世界の取組みの中で、先住民族の知識を十分活用すべきであるという注意喚起です」

出典:Benedikt G. Kuhnhäuser, Agusti Randi, Peter Petoe, Paul P. K. Chai, Sidonie Bellot, and William J. Baker (2023). Hiding in plain sight: The underground palm Pinanga subterranea, Plants, People, Planet | doi:10.1002/ppp3.10393

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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