行方不明時に発生する金銭的な負担とは
正直に言うと、認知症による徘徊を防ぐことは、なかなか難しい現状がある。家の外からロックを掛けて外出しないように対策を講じても、その結果、恐怖を募らせて、外に出たいという思いを募らせるものだ。うっかりロックし忘れた際などに外に出た結果、道路や線路で事故に遭い命を落としたというケースもある。
そのため、徘徊自体は止められないものと考え、対処療法的に臨む家族も少なくない。たとえば、洋服や下着の裏側に名前を書いておいたり、GPS発信機を組み込んだ靴を履かせたり、よく使うバックの中に名前や住所を書いた紙を入れるなどして、保護された際に所在がすぐにわかるような工夫もよく耳にする。
また、行政や福祉関係者、民生委員、民間事業者などが情報を共有する「見守りネットワーク」を利用することも、認知症の徘徊による行方不明者の早期発見に効果的だという。
厚生労働省でも身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイトの設置・運用のまとめサイトをつくっており、都道府県単位だけでなく市区町村単位の取組についても掲載の対象としている。
実際に家族が徘徊して行方不明という事態になったとき、大ごとにはしたくないという考えや、徘徊老人が身内にいることを恥ずかしいと思う気持ちから、警察への相談も滞りがちだ。しかし、行方不明者の発見は初動が大事。家族だけで探そうとしても、結果的に手遅れになってしまうことがある点は留意しておきたい。
いまのような暑い時期であれば熱中症、また、寒い冬なら凍死といった危険もある。交通事故に遭うほか、池や川へ転落したり、山に入って遭難したりするなど、認知症の人の徘徊にはさまざまな危険が伴う。
本人の身体的なリスクだけでなく、たとえば、お腹がすいてコンビニなどで盗みを働いて捕まるケースもあると聞く。また、保護される際などに暴れて人にけがを負わせるといったケースもあるだろう。
また、徘徊は徒歩による場合だけでなく、自転車や自動車を使用するケースも多い。判断能力も低下しているため、他人を巻き込んでの事故も起こしやすい。徘徊時に起こした賠償事故などの金銭的な負担も家族にのしかかる場合もある。
なにより、時間が経つと移動範囲が広がり、専門的な捜索のプロの手を借りるなどコストもかさむ。行方不明になったと気づいたら、躊躇せず速やかに警察に相談し、「見守りネットワーク」やプロの力も借りることも視野に入れながら捜す覚悟も重要だ。