ヘルスケア

2023.07.12 08:00

「やせ薬」にも使われる糖尿病薬、自殺念慮の副作用か 欧州当局が調査

遠藤宗生

Getty Images

デンマークの製薬大手ノボノルディスクが開発した糖尿病薬で、減量にも使われている「セマグルチド」と「リラグルチド」(いずれも一般名)について、アイスランドの保健当局が、使用中に自傷や自殺を考えたという患者の報告例が複数あったと注意を喚起した。欧州医薬品庁(EMA)が調査に乗り出している。

セマグルチドは糖尿病治療薬としては「オゼンピック」、肥満症治療薬としては「ウゴービ」という商品名で販売されている。リラグルチドは肥満症や糖尿病の治療薬「サクセンダ」(編集注:日本では「ビクトーザ」。糖尿病の治療薬として承認)で知られる。

EMAによると、アイスランド医薬品庁から、オゼンピックとサクセンダの服用と関係している可能性のある自殺念慮の報告例各1件、サクセンダの服用と関係している可能性のある自傷念慮の報告例1件について通知されたという。

ロイター通信によると、オゼンピックとサクセンダの欧州連合(EU)での製品情報に自殺念慮は副作用として挙げられていない。EMAはセマグルチドかリラグルチドを含む薬が患者に及ぼす影響について調べる方針だ。

ノボノルディスクはテレビ局CNBCに宛てた声明で「患者の安全は当社にとって最優先事項のひとつであり、当社の医薬品の使用による有害事象の報告はすべて真摯に受け止めている」と強調。そのうえで、大規模な臨床試験と市販後調査では、これらの薬の成分と自殺念慮との関連性は示されていないと説明した。

オゼンピックは成人の2型糖尿病患者に週1回、注射で投与する。ウゴービは肥満症患者の減量薬として使われ、セマグルチドの投与量としてはこちらのほうが多くなる。オゼンピックは米国では2型糖尿病の治療薬としてしか承認されていないが、減量を目的に処方する医師もいる。

オゼンピックやウゴービは起業家のイーロン・マスクやタレントのチェルシー・ハンドラーといった著名人も使っていると公言し、話題になった。人気が高まって供給が不足したため、ノボノルディスクが少量タイプの出荷を制限する事態にもなった。

フォーブスのデータでは、ノボノルディスクの2022年の売上高はおよそ224億ドル(約3兆1500億円)、最終利益は76億ドル(約1兆700億円)。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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