保険

2023.07.14 07:30

認知症による行方不明者は増加の一途。金銭的な支出に「保険」で備える

捜索費用をカバーする「保険」

さて、行方不明者の捜索にかかる費用が気になるという人もいるだろう。遠方で発見された場合の送迎タクシーの費用や、認知症の人が車を運転して徘徊した際にその車を現地から自宅まで搬送する運転代行の費用は、数万円単位でかかるという。介護事業者や探偵などに捜索を依頼するなど、人の力を借りての捜索にも、当然に費用が発生する。そのため、高齢者や認知症の家族を持つ人のなかには、保険で備える人もいる。

認知症高齢者が行方不明になった際に捜索費用をカバーする保険は、いくつかの保険会社で発売されている。

たとえば、東京海上日動火災保険の「認知症あんしんプラン」は、認知症の人およびその家族のための専用保険で、「公益社団法人認知症の人と家族の会」と、「高齢者の見守り支援に実績のある一般社団法人セーフティネットリンケージ(SNL)」との連携のもとに開発された保険だ。

主な補償内容は4つある。

「1. 行方不明時の捜索費用補償」は、認知症の人が行方不明となってから24時間経過しても発見されず、親族がその捜索のために費用を負担した場合、1事故につき30万円、保険期間を通じて100万円を限度に保険金が支払われる。

「2. 個人賠償責任補償」では、認知症の人やその家族が日常生活で他人にケガをさせたり、他人の財物を壊したり、線路への立ち入りで電車等を運行不能にさせてしまったこと等により、法律上の損害賠償責任を負う場合、1事故につき保険金額(国内1億円・国外1億円)を限度に保険金が支払われる。

「3. 被害者死亡時の見舞費用補償」は、認知症の人が日常生活に起因する偶然の事故で他人にケガをさせ、ケガをした人がその事故の直接の結果として死亡した場合、賠償責任の有無を問わず見舞費用保険金(15万円)が支払われる。

「4. 交通事故等によるケガに関する補償」では、認知症の人が交通事故等によるケガで死亡した場合に50万円、後遺障害が生じた場合にその障害の程度に応じて2万円から50万円が支払われる。

他にもこの保険に契約すると、「捜索支援サービス」の「緊急連絡ステッカー」と「捜索協力支援アプリ」が利用できる。

「緊急連絡ステッカー」にはフリーダイヤルが記載されており、認知症の人の財布や携帯電話等に貼り付けられたそのシールを見て発見や保護した人が連絡を入れると、ICT(情報通信技術)により、発見や保護した人と家族が互いの連絡先を非表示の状態で直接通話することが可能だ。
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文=竹下さくら

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