健康

2023.07.09

はしかの感染拡大、夏の旅行シーズン前に警戒感が強まる

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米国で初めて麻疹(はしか)ワクチンが認可されたのは、1963年のことだった。改良型ワクチンが利用可能になったのは、1968年。ワクチンは非常に効果が高く、米疾病対策センター(CDC)は2000年、国内における麻疹撲滅を宣言した。

だが、その後の約20年間で、子どもの麻疹ワクチンの接種率は米国でも世界でも低下。その結果、感染は再び拡大し、2019年には米国で1200人以上の感染が報告され、世界全体ではおよそ20万人が死亡した。

麻疹を巡る状況はいま、公衆衛生上の差し迫った脅威になりつつある。世界保健機関(WHO)はすでにそうした見方を明らかにしており、CDCも先ごろ、外国に旅行する人、医療従事者や公衆衛生当局の関係者に対し、夏の旅行シーズン中の感染拡大に警戒するよう勧告した。

極めて強い感染力

はしかの原因となる麻疹ウイルスは、最も感染力が強いものの1つとされている。感染者が室内に1人いれば、免疫を持たない人の90%以上が感染する。また、感染者が咳やくしゃみをすると、飛沫に含まれるウイルスは数時間にわたって空気中を漂い、1つの部屋から別の部屋まで拡散することもある。

自然感染とワクチン接種によって免疫を持つ人の割合が大きくなれば、その集団においては「集団免疫」が獲得されたことになる。ウイルスに対する抗体を持つ人が多いことで、感染は広がらなくなり、流行が抑えられる。

だが、世界的に低下傾向にあった麻疹ワクチンの接種率は、新型コロナウイルスのパンデミックの発生を受け、さらにその傾向を強めた。定期予防接種を受ける子どもの数は大幅に減少し、ワクチン接種を受けなかった子どもの数は2021年、過去最多の4000万人にのぼったと推計されている。

集団免疫は失われ、大流行が起きる確率は高まったということだ。

はしかの主な症状は?

麻疹ウイルスに暴露すると、それから1~2週間(の潜伏期間)が過ぎた後、咳や鼻水、発疹などの症状が現れる。結膜炎を起こす場合もある(その他のウイルス感染との区別が難しい症状だ)。

発症から3~5日後には高熱が出て、発疹が現れ始める。大抵の場合、まずは顔に出て、首から胴体、四肢へと広がる。はしかの症状は、当初は比較的軽度で、自然に治るものが多い。だが、深刻な合併症を起こす可能性もある。

米国ではワクチン未接種で感染した人の20%近くが、肺炎や脳炎で入院が必要になっている。子どもの場合、こうした状態になれば、聴覚障害や知的障害を起こす可能性もある。

予防方法はわかっている

世界では毎年10万人以上が、はしかが原因で死亡している。麻疹ワクチンは2回接種した場合の免疫獲得率が、97%以上とされているにもかかわらず、この有効なツールがいま、世界的に疑問視され、利用頻度が低下している。

1950年代、米国では毎年およそ400万人が麻疹ウイルスに感染し、そのうち5万人近くが入院し、500人余りが死亡していた。世界全体の状況はさらに厳しく、感染して発症する人は年間およそ3000万人、そのうち死者数は、200万~400万人にのぼっていた。

この感染症について、私たちがこうした歴史を繰り返す必要はない。過去20年に3000万近い人々の死を防いだ効果的なツールがあることは、わかっている。必要なのは、私たちがいま、行動に出ることだ。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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