エヴァ・イルーズ氏から現代社会に対する分析を伺い、資本主義が人間の感情や関係性をいかに巻き込み、変容させてきたのかについてあらためて考える契機となりました。選択する自由や、公正と平等を重んじる民主主義的な態度が、消費社会のなかで功利主義的な計算と結びついた結果、絆の非形成が生じる現代社会。イルーズ氏の議論は、感情の査定や消費に疲弊し、関係性からの撤退さえ始めた私たちの足元を照らしてくれます。
インタビューでは、文化資本との関連や、感情資本主義概念の社会学史上の意義など、より専門的な内容についても伺うことができました。そちらについてはまたどこかで発表したいと思います。インタビューで言及している『Cold Intimacies』は、2023年内に邦訳が刊行される予定です。(山田)
エヴァ・イルーズ◎ヘブライ大学社会学教授。フランス国立社会科学高等研究所教授。2022年6月にはケルン大学アルベルトゥス・マグヌス教授に就任。共著書に『ハッピークラシー』、著書に『ColdIntimacies』などがある。
山田陽子◎社会学者。大阪大学大学院人間科学研究科准教授。著書に『働く人のための感情資本論ーパワハラ・メンタルヘルス・ライフハックの社会学』『「心」をめぐる知のグローバル化と自律的個人像ー「心」の聖化とマネジメント』など。