普遍的管轄権に基づくドイツでの告訴は、プーチンとロシア軍による犯罪に対してウクライナや国際社会が取ってきた多くの措置の中で、正義と説明責任を追及するための新たな方法となりうる。紛争関連の性的暴力(CRSV)は、紛争に関わる犯罪の中でも見過ごされがちであり、プーチンとロシア軍による一連の犯罪のうち特に注意が必要なものだ。
2023年6月現在、ウクライナ検事総長室は208件に及ぶCRSV被害を捜査している。うち140件は被害者が女性、13件は未成年だ。一方、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、2022年2月~23年1月31日に133件のCRSV(男性85件、女性45件、少女3件)を記録し、被害の大半はロシアに占領された地域で発生したと報告している。
また、国連人権理事会が設置したウクライナに関する独立調査委員会は、性的暴力、拷問、残酷で非人道的な扱いなど、性差別・ジェンダー差別に基づく暴力行為がロシア軍兵士の一部にあったことを確認した。被害者の年齢は4~82歳と幅広く、「子どもたちはレイプされ、拷問され、不法に監禁された。また、爆発物による無差別攻撃で死傷している」として、その事例を挙げている。
これらの犯罪は、即決処刑、拷問、恣意的拘禁、強制移送と合わせ、ウクライナの一般市民に対する広範かつ組織的な攻撃の一環として行われている。そのため、戦争犯罪だけでなく、人道に対する罪として訴追することが可能であり、またそうすべきである。
ウクライナの法廷であろうと、その他の国の法廷であろうと、プーチンとロシア軍が犯した恐ろしい残虐行為に対して正義と説明責任を追及するため、取れる限りのあらゆる法的手段を模索することが重要だ。しかし、ウクライナの司法制度を包括的なものにし、戦争犯罪も、人道に対する罪も、ジェノサイド(集団殺害)でさえも、ありのままの犯罪として捜査・訴追できるよう必要なあらゆる国内法を整備することも、同様に重要である。
(forbes.com 原文)